法令上の制限 基礎編

自然公園法・河川法・海岸法・港湾法・森林法に関する問題

正解・解説


【正解】

× ×

次のそれぞれの記述は、○か、×か。

1.「国立公園又は国定公園の区域のうち普通地域(特別地域及び海中公園地区

に含まれない区域)内において、工作物の新築・改築・増築や土地の形状の変更など

の行為をしようとする者は、原則として、都道府県知事に対し、行為の種類、場所、

施行方法等を届出なければならない。」(新作問題)

【正解:×

 国立公園・国定公園は、地域の自然の風致を守る観点から、特別地域と普通地域と

に別けられ、さまざまな保護と利用の調整が行われています。普通地域は、定義として

は、特別地域及び海中公園地区に含まれない区域です。

 普通区域は、「特別地域と一体的に風景の保護を図ることが必要な地域で、

 普通地域は緩衝地帯的な管理が行われ、一定の行為について事前の届出
必要になります。

●普通地域(20条)
届出先 事前届出しなくてはいけない行為
国立公園 環境大臣 土地の形状を変更すること。

・その規模が環境省令で定める基準を超える工作物の新築・改築・増築

・広告物等を掲出・設置し、又は広告等を工作物に表示

・特別地域内の河川、湖沼等の水位又は水量に増減を
及ぼさせること。

・水面を埋立て、又は干拓すること。など

国定公園 都道府県知事

◆用語の意味

自然公園」・・・国立公園、国定公園、都道府県立自然公園

国立公園」・・・わが国の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地であって、
         環境大臣が指定するもの

国定公園」・・・国立公園に準じる優れた自然の風景地であって、環境大臣が指定

 ⇒ 自然公園法 最終改正:平成14年4月24日法律第29号  

2.「環境大臣は、国立公園又は国定公園の風致を維持するため、公園計画に基づ

いて、その区域(海面を除く。)内に、特別地域を指定することができる。」(新作問題)

【正解:×

◆特別地域

 国立公園では環境大臣が、国定公園では都道府県知事が、特別地域を指定します。

特別地域では、下の表にあげた行為は許可を受けなければいけません。

 http://www.pref.gifu.jp/s11549/sizenkoen/

●特別地域(第17条)
    誰が指定するか
許可権者
許可を受けなければいけない行為
国立公園 環境大臣 ・土地を開墾し、その他土地の形状を変更する

・工作物の新築、改築、増築

・広告物等を掲出・設置、又は広告等を工作物に表示

・河川、湖沼等の水位又は水量に増減を及ぼさせること

・水面を埋立て、又は干拓すること。など

国定公園 都道府県知事

特別地域に指定された際、既に着手していた行為[その旨の届出が必要]

非常災害のために必要な応急措置として行う行為などは許可は不要です。

許可を必要とするものは、普通区域での事前届出内容と似ていますが、木竹の伐採や環境大臣指定の高山植物の採取、損傷なども許可が必要とされ、自然景観の維持・保護のため、普通地域よりも厳しく規制されています。

特別保護区域

 特別地域内に、さらに制限の厳しい、特別保護区域を国立公園では環境大臣が、

国定公園では都道府県知事が指定できます。許可権者は、特別地域の場合と同じです。

<参考>

 http://www.pref.gifu.jp/s11549/sizenkoen/kisei.htm

3.「自然公園法によれば、国定公園の特別区域内において工作物の新築を行おうと

する者は、原則として都道府県知事の許可を受けなければならない。」(H11.25-3)

【正解:

◆国定公園の特別区域内の許可権者=都道府県知事

 本設問の記述の通りです。前の設問の解説参照。

国立公園の特別区域内の許可権者は、環境大臣です。 

 国立公園  特別地域
 特別保護地区
 海中公園地区
 環境大臣

 地域の指定・許可権者

 国定公園  特別地域
 特別保護地区
 海中公園地区
 都道府県知事

 地域の指定・許可権者

 普通区域は,国立公園又は国定公園の区域のうち特別地域及び海中公園地区に含まれない区域で,一定の行為について事前の届出が必要になります。

 国立公園  普通地域  環境大臣に届出。
 国定公園  普通地域  都道府県知事に届出。

4.「河川法によれば、河川保全区域内において土地の形状を変更する行為(政令で

定める行為を除く)をしようとする者は、河川管理者の許可を受けなければならない。」

【正解:平成10年問25肢4

◆河川法

 河川区域,河川保全区域,河川予定地で以下のような行為をしようとするには、

河川管理者の許可が必要です。(55条1項)

●河川法
   河川管理者
制限内容
1級河川 国土交通大臣 ・土地の掘さく,盛土又は切土その他土地の形状を
変更する行為(昭和62,平成10,14)

・工作物の新築又は改築(平成13)

(2つとも,政令で定める行為については除く)

2級河川 都道府県知事

(1級河川は国土交通大臣,2級河川は都道府県知事が指定。)

(河川法において「河川」とは,1級河川及び2級河川をいい,これらの河川に係る河川管理施設を含むものとする。)

◆河川保全区域→河川管理者が指定

第1条 この法律は、河川について、洪水や高潮等による災害の発生が防止され、河川が適正に利用され、流水の正常な機能が維持され、及び河川環境の整備と保全がされるようにこれを総合的に管理することにより、国土の保全と開発に寄与し、もって公共の安全を保持し、かつ公共の福祉を増進することを目的とする。

河川管理の自的=「治水」、「利水」、「河川環境」(水質、景観、生態系等)の整備と保全

◆河川区域

 河川区域では,以下の行為をしようとする者は河川管理者の許可を受けなければいけません。届出ではないので注意。

 土地の占用の許可(24条),土石等の採取の許可(25条),工作物の新築・改築・除却の許可(26条)昭和57年出題,土地の掘削,盛土若しくは切土その他土地の形状を変更(27条)

 ⇒ 河川法 最終改正:平成14年3月30日法律第4号

●類題
河川法によれば,河川保全区域内において,土地の堀さく,盛土又は切土を行う者

は,原則として河川管理者の許可を受けなければならない。(H14-24-4)

【正解:

5.「海岸法によれば,海岸保全区域内において土石の採取などの行為をしようとする

者は,原則として海岸管理者の許可を受けなければならない。」

【正解:平成14年問25肢2

◆海岸法

 海岸保全区域内において土石の採取などの行為をしようとする場合は,原則として海岸管理者の許可が必要です。

海岸法 第8条(海岸保全区域における行為の制限) 

 海岸保全区域内において,次に掲げる行為をしようとする者は,主務省令で定めるところにより,海岸管理者の許可を受けなければならない。ただし,政令で定める行為については,この限りでない。

1.土石(砂を含む。以下同じ。)を採取すること。(平成14年)

2.水面又は公共海岸の土地以外の土地において,他の施設等を新設し,又は改築すること。

3.土地の掘削,盛土,切土その他政令で定める行為をすること。

◆海岸保全区域→都道府県知事が指定

 海岸保全区域での海岸管理者は,原則として都道府県知事(市町村の長,地方公共団体の長の場合もある)。

 ⇒ 海岸法 最終改正:平成14年2月8日法律第1号 

●港湾法

.「港湾法によれば,港湾区域内において,港湾の開発に著しく支障を与えるおそれのある一定の行為をしようとする者は,原則として国土交通大臣の許可を受けなければならない。(平成15年・問25・肢2)

【正解:×】港湾管理者の許可が必要です。(港湾法37条)
 道路  (道路法)  道路管理者
 都市公園  (都市公園法)  公園管理者
 河川保全区域  (河川法)  河川管理者
 海岸保全区域  (海岸法)  海岸管理者
 港湾区域  (港湾法)  港湾管理者

港湾法37条(港湾区域内の工事等の許可)港湾区域内において又は港湾区域に隣接する地域であつて港湾管理者が指定する区域(「港湾隣接地域」)内において、左の各号の一に掲げる行為をしようとする者は、港湾管理者の許可を受けなければならない。但し、公有水面埋立法 (大正十年法律第五十七号)第二条第一項 の規定による免許を受けた者が免許に係る水域についてこれらの行為をする場合は、この限りでない。

一  港湾区域内の水域(政令で定めるその上空及び水底の区域を含む。以下同じ。)又は公共空地の占用

二  港湾区域内の水域又は公共空地における土砂の採取

三  水域施設、外郭施設、係留施設、運河、用水きよ又は排水きよの建設又は改良(第一号の占用を伴うものを除く。)

四  前各号に掲げるものを除き、港湾の開発、利用又は保全に著しく支障を与えるおそれのある政令で定める行為

 ⇒ 港湾法 最終改正:平成15年5月16日法律第41号

 臨港地区内で「港湾の開発、利用又は保全に著しく支障を与えるおそれのある政令で定める施設の建設又は改良 」を行おうとする者はその旨を港湾管理者に事前に届け出ることになっている。(港湾法・38条の2第1項4号)

都市公園法・・・都市公園に公園施設以外の工作物その他の物件又は施設を設けて都市公園を占用しようとするときは、公園管理者の許可を受けなければならない。(都市公園法6条1項)

1.電柱、電線、変圧塔その他これらに類するもの
2.水道管、下水道管、ガス管その他これらに類するもの
3.通路、鉄道、軌道、公共駐車場その他これらに類する施設で地下に設けられるもの
4.郵便差出箱、信書便差出箱又は公衆電話所
5.非常災害に際し災害にかかつた者を収容するため設けられる仮設工作物
6.競技会、集会、展示会、博覧会その他これらに類する催しのため設けられる仮設工作物
7.前各号に掲げるもののほか、政令で定める工作物その他の物件又は施設

 ⇒ 都市公園法 最終改正:平成15年6月20日法律第100号 

6.「森林法によれば、地域森林計画の対象となっている民有林において開発行為を

しようとする者は、原則として都道府県知事の許可を受けなければならない。」(昭和58,60)

【正解:

◆地域森林計画対象の民有林の開発許可権者=都道府県知事

 地域森林計画の対象となつている民有林において開発行為(土石又は樹根の採掘、開墾その他の土地の形質を変更する行為で、森林の土地の自然的条件、その行為の態様等を勘案して政令で定める規模1 haを超えるもの。)をしようとする者は、農林水産省令で定める手続に従い、都道府県知事の許可を受けなければならない。 (森林法・第10条の2・第1項)

 地域森林計画の対象とする森林の区域は、都道府県知事が指定します。

▼地域森林計画

第5条 都道府県知事は、全国森林計画に即して、森林計画区別に、その森林計画区に係る民有林(その自然的経済的社会的諸条件及びその周辺の地域における土地の利用の動向からみて、森林として利用することが相当でないと認められる民有林を除く。)につき、5年ごとに、その計画をたてる年の翌年4月1日以降10年を一期とする地域森林計画をたてなければならない。

 ⇒ 森林法 最終改正:平成16年3月31日法律第20号

●参考問題
1.「地域森林計画の対象になっている民有林(保安林ならびに保安施設地区の区域内および海岸保全区域内の森林を除く。において開発行為をしようとする者は、森林法の規定に基づき、原則として、農林水産大臣の許可を受けなければならない」ほ(昭和60-27-4)

【正解:×

×・・・農林水産大臣の許可 → ○・・・都道府県知事の許可

2.「保安林において、立木を伐採しようとする者は、原則として、市町村長の許可を受けなければならない。」(昭和58-28-1)

【正解:×

×・・・市町村長の許可 → ○・・・都道府県知事の許可

▼森林法・第34条

1 保安林においては、政令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければ、立木を伐採してはならない。

2 保安林においては、都道府県知事の許可を受けなければ、立竹を伐採し、立木を損傷し、家畜を放牧し、下草、落葉若しくは落枝を採取し、又は土石若しくは樹根の採掘、開墾その他の土地の形質を変更する行為をしてはならない。


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