法令上の制限 実戦篇

建築基準法の過去問アーカイブス 平成16年・問21 小問集合


建築基準法に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成16年・問21)

1.「準防火地域内においては,延べ面積が1,200平方メートルの建築物は耐火建築物としなければならない。」

2.「木造3階建て,延べ面積500平方メートル,高さ15メートルの一戸建て住宅について大規模の修繕をする場合は,建築確認を受ける必要はない。」

3.「特定行政庁は,仮設店舗について安全上,防火上及び衛生上支障がないと認める場合には,一定の場合を除き,1年以内の期間を定めてその建築を許可することができる。」

4.「居室を有する建築物は,住宅等の特定の用途に供する場合に限って,その居室内においてホルムアルデヒド及びクロルピリホスの発散による衛生上の支障がないよう,建築材料及び換気設備について一定の技術的基準に適合するものとしなければならない。」

【正解】

× × ×

1.「準防火地域内においては,延べ面積が1,200平方メートルの建築物は耐火建築物としなければならない。」

【正解:×

◆耐火建築物=準防火地域

 準防火地域内,地階を除く階数は不明,延べ面積が1,200平方メートル
 ↓
 地階を除く階数が4以上で,500平方メートル<延べ面積≦1,500平方メートルなら

耐火建築物

 地階を除く階数が3以下で,500平方メートル<延べ面積≦1,500平方メートルなら

耐火建築物,または準耐火建築物

 準防火地域内では,地階を除く階数が4以上又は延べ面積が1,500平方メートルを超える建築物の場合は,耐火建築物にしなければなりません。(建築基準法・62条・1項)

 本肢では,延べ面積が1,200平方メートルとあるだけで階数については言及されていませんが,階数が4以上であれば耐火建築物,階数が3以下ならば耐火建築物または準耐火建築物としなければいけません。

 したがって,延べ面積の1,200平方メートルだけで耐火建築物としなければならないという規定はないので,誤りです。

●原則として,耐火建築物としなければならないもの
 防火地域  地階を含む階数が3以上,または,延べ面積が100平方メートル超
 準防火地域  地階を除く階数が4以上,または,延べ面積が1,500平方メートル超

●防火地域

延べ面積 \ 地階を含む階数 2以下 3以上
延べ面積≦100平方メートル 耐火 or 準耐火 耐火建築物
100平方メートル<延べ面積 耐火建築物 耐火建築物

●準防火地域

延べ面積 \ 地階を除く階数 2以下 4以上
延べ面積≦500平方メートル        耐火 or 準耐火 or

技術的基準に適合

耐火
500平方メートル<延べ面積≦1,500平方メートル 耐火 or 準耐火 耐火 or 準耐火 耐火
1,500平方メートル<延べ面積 耐火 耐火 耐火

2.「木造3階建て,延べ面積500平方メートル,高さ15メートルの一戸建て住宅について大規模の修繕をする場合は,建築確認を受ける必要はない。」

【正解:×

◆木造の大規模建築物−産(3)後の(500)父さん(13),苦労(9)する

●木造の大規模建築物
地階を含む階数が3以上  ⇒   建築確認が必要

 新築,*増築,*改築,*移転
 大規模の修繕
 大規模の模様替え
 100平方メートル超の特殊建築物への用途変更

*増築・改築・移転は
 (防火・準防火地域外) 『10平方メートル超』のとき,確認要。
 (防火・準防火地域内) 面積に関係なく,確認が必要。

延べ面積500平方メートル超
高さ13m超
軒高9m超

 防火地域・準防火地域以外で,増築・改築・移転で延べ面積10平方メートル以内のものは建築確認は不要。(建築基準法・6条2項)

 木造の建築物で地階を含む階数が3以上,延べ面積500平方メートル超,高さ13メートル超,軒高9m超のどれかに該当するときは,大規模の修繕をしようとする場合に,建築確認が必要です。(建築基準法・6条1項2号)

 本肢の場合は,このうち「3階」,「高さ15メートル」が達しているので,建築確認が必要です。

●仮設建築物と建築確認
 仮設建築物では,建築確認の規定〔6条〜7条の6〕が適用されない場合があります(建築基準法85条2項,5項)
災害があつた場合において建築する停車場、郵便局、官公署
その他これらに類する
公益上必要な用途に供する応急仮設建築物

工事を施工するために現場に設ける事務所、下小屋、材料置場
その他これらに類する
仮設建築物

 建築確認は適用されない。
仮設興行場、博覧会建築物、仮設店舗
その他これらに類する仮設建築物

〔建築には特定行政庁の許可が必要。〕

 建築確認は適用される。

3.「特定行政庁は,仮設店舗について安全上,防火上及び衛生上支障がないと認める場合には,一定の場合を除き,1年以内の期間を定めてその建築を許可することができる。」

【正解:仮設建築物の出題・昭和60年・問20・肢1,

◆仮設建築物に対する制限の緩和

 特定行政庁は,仮設興行場,博覧会建築物,仮設店舗その他これに類する仮設建築物について安全上,防火上及び衛生上支障がないと認める場合,1年以内の期間を定めてその建築を許可することができます。(建築基準法・85条5項前段)

▼ただし、建築物の工事施工のための工事期間中に従前の建築物に替えて必要となる仮設店舗等の仮設建築物については,1年以内ではなく,特定行政庁が施工上必要と認める期間です。(建築基準法・85条5項前段括弧内)

4.「居室を有する建築物は,住宅等の特定の用途に供する場合に限って,その居室内においてホルムアルデヒド及びクロルピリホスの発散による衛生上の支障がないよう,建築材料及び換気設備について一定の技術的基準に適合するものとしなければならない。」

【正解:×

◆居室内における化学物質の発散に対する衛生上の措置

 居室を有する建築物は,その居室内においてホルムアルデヒドの発散による衛生上の支障がないように,建築材料及び換気設備について一定の技術的基準(施行令20条の7〜9)に適合するものとしなければいけません。(建築基準法・28条の2第3号)

 このことは,「住宅等の居室」に限らず,「住宅等の居室以外の居室」についても適用されます。(建築基準法施行令20条の7〜9)

 本肢では<住宅等の特定の用途に供する場合に限って>とあるので,誤りです。

建築基準法上の居室とは,「居住,執務,作業,集会,娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室」をいい,必ずしも住宅の中のものとは限りません。(建築基準法・2条・4号)

クロルピリホスに関する技術的基準は、「クロルピリホスを建築材料に添加しないこと」、「クロルピリホスをあらかじめ添加した建築材料(発散させるおそれのないものとして国土交通大臣が定めたものを除く)」、となっています。クロルピリホスについては、換気設備についての規定はありません。(建築基準法施行令20条の6)

●有害物質の飛散・発散に対する衛生上の措置
 建築基準法では、著しく有害な物質として石綿(アスベスト)、居室内において衛生上の支障を生ずるおそれがある物質としてクロルビリホス・ホルムアルデヒドを規定し、それらの物質の飛散または発散による衛生上の支障がないよう、一定の基準に適合しなければならないとしています(28条の2,施行令20条の4,20条の5)
  適用対象  基準
クロルビリホス・ホルムアルデヒド

の発散に対する基準

居室を有する建築物

(工作物にも準用)
建築材料・換気設備について
政令で定める技術的基準に
適合すること。
石綿(アスベスト)の飛散・発散

に対する基準

建築物

(工作物にも準用)

・建築材料に純粋な状態で
石綿等を添加しないこと。

・原則として,
石綿等をあらかじめ添加した
建築材料を使用しないこと。

 28条の2第1号は,純粋な状態で石綿を添加することを禁止しています。

 28条の2第2号は,原則として,石綿等をあらかじめ添加した建築材料の使用が禁止されています(石綿等を飛散又は発散させるおそれがないものとして国土交通大臣が定めたもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを除く。)
 具体的には,「吹付け石綿」,または,「吹付けロックウールでその含有する石綿の重量が当該建築材料の重量の0.1%を超えるもの」の使用が禁止されています(国土交通省告示1172号)

●条文確認

(石綿その他の物質の飛散又は発散に対する衛生上の措置)

第28条の2  建築物は、石綿その他の物質の建築材料からの飛散又は発散による衛生上の支障がないよう、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。

一  建築材料に石綿その他の著しく衛生上有害なものとして政令で定める物質(次号及び第三号において「石綿等」という。)を添加しないこと。

二  石綿等をあらかじめ添加した建築材料(石綿等を飛散又は発散させるおそれがないものとして国土交通大臣が定めたもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを除く。)を使用しないこと。

三  居室を有する建築物にあつては、前二号に定めるもののほか、石綿等以外の物質でその居室内において衛生上の支障を生ずるおそれがあるものとして政令で定める物質 (施行令20条の5。ホルムアルデヒド、クロルピリホス) の区分に応じ、建築材料及び換気設備について政令で定める技術的基準に適合すること。


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