Brush Up! 権利の変動篇
第三者の弁済に関する問題 昭和47年
第三者の債務弁済について,次のうち誤っているものはどれか。(昭和47年) |
1.「債務の性質によっては第三者による弁済が許されないこともある。」 |
2.「利害関係のない第三者は債務者の意思に反しても債権者の同意があれば弁済することができる。」 |
3.「第三者が弁済することは当事者が反対の意思を表示したときは許されない。」 |
4.「物上保証人である第三者も担保不動産の取得者である第三者も債務者の意思に反して弁済することができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
●第三者弁済のアウトライン | ||||||||||
■第三者の弁済=第三者が他人の債務を自己の名において弁済すること。 (第三者は、自己がその債権者に対して有する債権を自働債権として、 ■民法では、原則として、特別の事情がない限り、第三者が債務者に代わって弁済することを認めています。例外的に許されないのは以下の三つです。(民法474条) ・債務の性質が許さないとき。(→ その人でなければ不可能な給付は第三者弁済をすることはできない) ・当事者が反対の意思表示をしたとき。 ・法律上の利害関係のない第三者の弁済が債務者の意思に反するとき ■第三者の弁済の効果
→ 抵当権のついている不動産の第三取得者が第三者弁済した場合は,民法567条2項の出捐の償還と損害賠償の請求と,民法500条の法定代位とどちらを適用してもよいことに注意。 |
第三者の債務弁済について,次のうち誤っているものはどれか。(昭和47年)
1.「債務の性質によっては第三者による弁済が許されないこともある。」
【正解:○】 その人でしかできないとされているもの、例えば、有名俳優・歌手の出演、有名人の講演などは、その人だから契約したのであって、「代わりにピンチヒッターで、格は落ちるけれども、○○が出演、講演(債務の履行)します」と言われても、債権者は納得できないでしょう。 このように、その人でなければ不可能な債務は、契約の性質上、第三者弁済をすることができません。(474条1項但書) |
2.「利害関係のない第三者は債務者の意思に反しても債権者の同意があれば弁済
することができる。」
【正解:×】 「債権者の同意」ではなく、「債務者の同意」です。 第三者は,法律上の利害関係がないときは、債務者の意思に反して弁済をすることができません。しかし、法律上の利害関係のない第三者も債務者の同意があれば第三者弁済することができ、この場合、債権者は拒めないとされています。(474条2項) したがって、「債務者の意思に反しても債権者の同意があれば弁済することができる」と本設問ではなっているため、×になります。 ■法律上の利害関係のない第三者が弁済するときになぜ債務者の同意が必要なのか? →法律上の利害関係のない第三者として闇金融や暴力金融などが第三者弁済した場合、怖いと思いませんか? 第三者弁済すれば、求償権も取得しているわけですから、こういう人には払ってもらいたくないとお断りするのは当然の話です。 |
3.「第三者が弁済することは当事者が反対の意思を表示したときは許されない。」
【正解:○】 当事者(債権者と債務者)が、第三者弁済は許さないことで合意していた場合は、第三者弁済はできません。(474条1項但書) ▼第三者の弁済はできないという合意が当事者双方にあるときは、利害関係があっても第三者の弁済はできないことになるので、法学者の間では問題とされています。 |
●参考問題 |
1.「当事者が第三者の弁済について反対の意思を表示している場合には,第三者の弁済はもちろん,履行補助者や代理人による弁済も許されない。」(国税専門官採用試験) |
【正解:×】履行補助者や代理人による弁済は,本人による弁済なので誤りです。 |
4.「物上保証人である第三者も担保不動産の取得者である第三者も債務者の意思に
反して弁済することができる。」
【正解:○】 第三者は,法律上の利害関係がないときは,債務者の意思に反して弁済をすることができません。(474条2項,判例)→条文上は「利害関係を有しない第三者は債務者の意思に反して弁済することができない。」となっている。
この「法律上の利害の関係のある第三者」の中には、物上保証人・担保不動産の取得者が含まれるので、物上保証人・担保不動産の取得者である第三者は債務者の意思に反して弁済することができます。
▼整理
▼注意 単なる保証人による債務の弁済は、自らが負担している保証債務の弁済であり、第三者の弁済にはなりません。他人の債務を保証した者は、他人がその債務を履行しないときには、その債務を他人に代わって履行する責任を負います。(保証人、連帯保証人、連帯債務者などによる弁済は第三者としての弁済ではなく、債務者とともに債務を負担する者としての弁済であることに注意) ▼注意 第三者の弁済が無効なときに、弁済した第三者は、債権者に対して「不当利得返還請求」をすることになります。債務者に対してではないので注意してください。 第三者の弁済が無効でないときは、弁済した第三者は、債務者に対して求償することができることと対比して覚えてください。 |
●類題 |
1.「AはBから土地を購入したが,その土地にはBの債権者Cのために抵当権が設定され,登記もされていた。BがCに対して負う債務をAがBに代わって弁済するためには,Bの承諾を得なければならない。」(昭和58年・問10) |
【正解:×】 B(抵当権設定者)・・・・C(抵当権者) BC間で前もって第三者の弁済を禁じる合意がなされていないならば、Aは、利害関係のある第三者なので、債務者Bの意思に反しても第三者弁済をすることができます。(474条2項) |