弁済について，次の記述のうち，誤っているものはどれか。(昭和55年・問12)

２．「弁済者が他人の物を引き渡したときは，更に有効な弁済をしないと，その物を取り戻すことはできない。」

４．「債権者の同意を得たときは，負担した給付に代えて他の給付をしても，弁済したことになる。」

■弁済

　債務の内容を実現させる行為。債務の本旨に従った給付をなすこと。履行ともいう。
　弁済の具体例は、代金の支払いやものの引き渡しなど。
　弁済によって債権は消滅します。
　弁済は債務者以外の第三者がなし得ることもある。

　給付＝債務者がなすべき行為。(財貨または労務の提供、一定の行為をしないこと)

　債権＝債権者が債務者に対して、一定の財産上の行為(給付)を請求する権利。

■持参債務と取立債務

　持参債務・・・債権者の住所地を履行場所とする債務。

　取立債務・・・債務者の住所地を履行場所とする債務。

弁済について，次の記述のうち，誤っているものはどれか。(昭和55年・問12)

【正解：○】

　第三者は，法律上の利害関係がないときは，債務者の意思に反して弁済をすることができません。(474条２項，判例)

▼民法では、原則として、特別の事情がない限り、第三者が債務者に代わって弁済することを認めています。例外的に許されないのは以下の三つです。(民法474条)

・債務の性質が許さないとき。(→　その人でなければ不可能な債務は第三者弁済をすることはできない)

・当事者が反対の意思表示をしたとき。

・利害関係のない第三者の弁済が債務者の意思に反するとき

【正解：○】

　弁済者が、他人の物を引き渡したときは、さらに自己の所有物を引き渡すなど有効な弁済をしなければ、その物を取り戻すことはできません。(民法475条)

　債権者の保護のために、「他人の物」を留置する権利を認めました。債権者は、有効な弁済と引き換えに、「他人の物」を返すことになります。

▼不特定物の引渡し(種類物の給付)を目的とする債権についてのみ適用される。特定物の引渡しを目的とする債権の場合は、弁済者は「更に有効な弁済」をすることはできません。→出題頻度は少ない。

【正解：×】

　本来は、弁済を受領する権限のない者にした弁済は効力を生じません。

しかし、民法では、次のような例外を設けています。→平成５年・11年に出題。

　したがって、「いかなる場合でも無効」という本設問は×になります。

　弁済者が善意無過失であれば、準占有者に弁済したときは、弁済の効力を持つ。(民法478条)

【正解：○】

　債務者は、債権者の同意を得たときは、負担した給付に代えて他の給付をしても、その給付は弁済と同一の効力を持ちます。(482条)　代物弁済

　弁済の場所は、特約または慣習で定めるのが原則です。

しかし、当事者で弁済の場所について定めがない場合は、

1) 特定物の引渡し(例・不動産)　を目的とする債務では、債権が発生した当時に、その物が存在した場所で

2) 上記以外の場合は、弁済をするときの債権者の住所で

　弁済します。(民法484条)

　したがって、代金や貸金の債務は、別段の定めがない限り、債権者の現時の住所が弁済する場所になります。

　金銭債務では、弁済の場所について、当事者間で定めがなければ、債権者の現時の住所が弁済する場所になります。したがって、本設問の場合は、債権者が移転した住所で弁済することになります。