Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
契約解除に関する問題4
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
Aが、B所有の建物を代金8,000万円で買い受け、即日3,000万円を支払った場合で、残金は3ヵ月後に所有権移転登記及び引渡しと引換えに支払う旨の約定を交わした。 この場合、次のそれぞれの記述は民法の規定及び判例によれば○か、×か。 |
1.「Aは、履行期前でもBに残金を提供して建物の所有権移転登記及び引渡しを請求し
、Bがこれに応じない場合、Aは売買契約を解除することができる。」
【正解:×】 ◆履行期が約定されている場合 3ヵ月後に建物を渡すという契約なので、売主Bはそれまで建物を利用できる権利(これを“期限の利益”という:民法第136条1項)があり、買主Aが履行期前に残金を提供して建物の引渡し等を要求したとき、売主Bがその要求を拒否しても、特約のない限り、Bは債務不履行の責任を問われることはなく(第412条)、それを理由に、買主Aは当該契約を解除することはできません。(541条) つまり、建物の売主Bは、約定した3ヶ月間は当該建物を使用することができるのを予定(=期限の利益を期待)して、当該売買契約を締結したものであり、買主Aが、「金を払うからスグに出て行け」と言うのは、Aの勝手な行為です。 |
2.「Bが、履行期に建物の所有権移転登記はしたが、引渡しをしない場合、特別の合意が
ない限り、Aは、少なくとも残金の半額2,500万円を支払わなければならない。」
【正解:×】 ◆移転登記をしていても、引渡しをしなければ、履行遅滞になる “残金の支払いと移転登記並びに建物の引渡しは同時に行う契約(同時履行の抗弁権が成立)”なので、売主Bが移転登記をしただけであって建物の引渡しをしないとき、表面上は半分の履行かもしれませんが、Aは特約のない限り、残金の支払いを、半額・全額にかかわらず拒否することができます(第533条)。 |
3.「Bが、Aの代金支払いの受領を拒否してはいないが、履行期になっても建物の所有権
移転登記及び引渡しをしない場合、Aは、Bに催告するだけで売買契約を解除することが
できる。」
【正解:×】 ◆催告+履行の提供をしなければ、同時履行の抗弁権により解除できない 設問2でも解説しましたが、ABともに“同時履行の抗弁権”があり、買主Aは売主Bに催告しただけでは、Bが建物の引渡し等を拒否しても、債務不履行の責任を問うことはできません。 つまり、買主Aが残金の提供をして催促をしたにもかかわらず、売主Bが引渡し等を拒否したとき、Bは“履行の遅滞”となって、はじめてAはBに対して債務不履行の責任(契約の解除 等)を問うことができます(第541条)。 ▼ 契約を解除するには、履行の催告をするだけでなく、自ら履行の提供もしてBを履行遅滞に陥らせる必要があります。 |
4.「Aが、履行期に残代金を提供し、相当の期間を定めて建物の引渡しを請求したにもか
かわらず、Bが建物の引渡しをしないので、AがCの建物を賃借せざるを得なかった場合、
Aは、売買契約の解除のほかに、損害賠償をBに請求することができる。」
【正解:○】 ◆履行遅滞による損害賠償−解除権の行使と損害賠償請求 Aが、履行期に残代金を提供し、相当の期間を定めて建物の引渡しを請求したにもかかわらず、Bが建物の引渡しをしないのは、Bが履行遅滞になっていることを意味します。 また、Aが他人の建物を賃借せざるを得なかったのは、Bの債務不履行と因果関係がある損害です。 したがって、買主Aは、債務不履行による“契約の解除”と建物賃貸料など発生した“損害賠償”をBに請求することができます(第541条、第545条3項)。 <関連> 原状回復義務として、“金銭を返却する場合”には、受領のときからの利息をつけて返却しなければなりません。 |