Brush Up! 権利の変動篇

契約解除に関する基本問題1

正解・解説


【正解】

×

●どんなときに解除できるか-債務不履行による解除を見る視点
 契約から生じる様々な債務のうち,中心的なものの不履行だけが,解除権を発生させるという考え方を判例はとっている。(大村敦志・基本民法2/有斐閣)

履行遅滞による解除→判例では債務者による帰責事由が必要だとしている。

 当事者の一方がその債務を履行しないときは相手方は相当の期間を定めてその履行を催告し,もしその期間内に履行がないときは契約の解除をすることができる。(541条)

履行不能による解除

 履行の全部または一部が債務者の責に帰すべき事由によって不能となったときは債権者は契約の解除をすることができる。(543条)

(註) 履行不能,または債務不履行になった債権に着目して「債権者」,「債務者」という言葉を用いている。

家屋の売買契約の解除に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
(昭和56年・問7)

1.「買主が解除権を取得し,解除の意思表示を売主に対してした場合,あとで買主が

意を翻してその意思表示を取り消せば,売買契約は有効に存続する。」(昭和58-5-1)

【正解:×

◆解除したら取消し(撤回)できない 

 解除権を持った者が解除の意思表示をして相手方に到達する直ちにその効果が生じ(540条)、解除の訴求効によって、解除による損害賠償請求権を除いて契約はなかったのと同じ状態になり、当事者に原状回復の義務が生じます。(545条1項)

 そして、この解除の意思表示は、取り消すことができません。これは、解除に取り消しが許されるとすると相手方の地位を不安定にして法律関係がますます複雑になるを避けるためです。(540条2項)

解除の取り消しができないといっても、行為能力の制限や詐欺・強迫によって解除の意思表示がなされたような場合は、解除の意思表示を取り消すことができます

2.「売主の過失で家屋が焼失してしまった場合,買主は売買契約を解除することができる。」

(H元年-9-4など頻出問題)

【正解:

◆債務者の過失による履行不能 

 引渡し債務の債務者(売主)の過失によって家屋が焼失しているので、履行不能により買主は直ちに解除することができます。(543条)

3.「家屋の引渡しの日が到来しても売主が引渡しをしない場合,買主は相当の期間

を定めて引き渡すべき旨を催告し,その期間内になお引渡しがなされないときは,

買主は売買契約を解除することができる。」(頻出問題)

【正解:

◆履行の催告+解除の意思表示 

 売主(債務者)が履行期を過ぎても引渡し債務を履行しない場合は、履行遅滞になり、買主は相当の期間を定めて引き渡すべき旨を催告し,その期間内になお引渡しがなされないときは,買主は売買契約を解除することができます。(541条)

●履行遅滞での解除権の発生

相当の期間を定めてその履行を催告し、その相当期間内に履行されなかったときに解除権が発生する。(541条)

1)債務者の責めに帰すべき事由による履行遅滞であること。

・履行期に履行が可能。→原始的不能との区別

・履行期を徒過すること。

・債務者の責めに帰すべき事由に基づくこと。→危険負担の債権者主義との区別

・履行しないことが違法であること。

 双方とも履行していない場合相手方が同時履行の抗弁権を有する場合には、一方の当事者は自分の債務の履行を提供しておかなければ解除をすることができない。

2)催告期間内に履行されなかったこと。

履行の催告は、一定の期間を明示していなくても有効とされています。(大審院・昭和2.2.2)

4.「売買契約が解除された場合,売主及び買主は,それぞれ第三者の権利を害し

ない範囲で相手方を原状に回復させる義務を負う。」

【正解:

◆原状回復義務 

 当事者の一方の解除の意思表示により契約解除になったときには、当事者双方とも原状回復義務を負います(545条1項)

 このとき、第三者の権利を害してはならないとされています。(545条1項但書)


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