Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

担保責任に関する問題2    平成8年・問8


【正解】

×

から建物所有の目的で土地を買い受ける契約をしたがAB間に担保責任に関する特約はなかった。この場合次のそれぞれの記述は民法の規定及び判例によれば○か×か。(平成8年・問8)

1.「この土地がの所有であることをが知って契約した場合でもがこの土地をから取得してに移転できないときにはに対して契約を解除することができる。」

【正解:

 『他人所有物』を売買の対象としたとき、取得できなかった買主は、善意・悪意にかかわらず“契約を解除”することになります。

また、善意であれば、“損害賠償”も併せて請求することができます(民法第561条)

     買主  解除  損害賠償  除斥期間
 全部他人物売買  善意      なし
 悪意    ×  なし

2.「この土地の8割の部分はの所有であるが2割の部分がの所有である場合所有の部分を取得してに移転できないことをが知って契約したときでもに対して契約を解除することができる。」

【正解:×

 売買の目的物の『一部が他人に属する』ものであったときは、買主は、善意悪意にかかわらず、足りない部分の“代金を減額請求”することはできます(悪意者であっても、数量が増える可能性のない『数量不足』の場合と異なり、その第三者から取得できることが期待できるため)。

 しかし、悪意の場合は、移転できない危険性をあらかじめ承知しているため、“契約の解除”をすることまではできません(第563条1項、2項)

    買主  代金減額  解除  損害賠償  除斥期間
 一部他人物売買  善意        知ったときから1年
 悪意    ×  ×  契約時から1年

3.「この土地が抵当権の目的とされておりその実行の結果が競落したときに対して契約を解除することができる。」

【正解:

 『抵当権の実行』によって、買主が売買の目的物を失ったとき、買主は、善意・悪意にかかわらず、当該“契約を解除”することができます(あわせて“損害賠償請求”も:第567条)。

 つまり、抵当権付不動産であろうと、不動産の取得者は、その不動産を使用する目的で取得したのであり、それが、優先権が認められている抵当権者(第369条)が抵当権を実行することにより不可能となった場合、当該取得者には“解除権”が与えられています

    買主  解除  損害賠償  除斥期間
 抵当権による所有権の喪失  善意      ない
 悪意      ない

4.「この土地の8割が都市計画街路の区域内であることが容易に分からない状況になったためがこのことを知らなかった場合でこのため契約の目的を達することができないときに対して契約を解除することができる。」(類題・昭和53年)

【正解:

 売買の目的物に『隠れた瑕疵』があるとき、それにより契約をした目的が達成できない買主は、“契約の解除”をすることができます(第570条)

 判例によれば、行政上の制約も『隠れた瑕疵』に該当し、買主が善意・無過失であれば、“契約を解除”することができます。 (大審院・大正4.12.21、最高裁・昭和56.9.8など)

〔例〕判例で『隠れた瑕疵』にあたるとされたもの

・工場用地として土地を買ったら、河川法上の制限で建築物が建てられない。

・宅地造成しようとして山林を買ったら、森林法上の制限で宅地が造成できない。

●隠れた瑕疵  物理的瑕疵
 法律的な瑕疵(障害)
    買主  損害賠償  解除  除斥期間
 隠れた瑕疵  善意無過失      知ったときから1年
 悪意  Φ  Φ   Φ

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