Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
手付に関する問題
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
不動産の売買契約における手付に関する次の記述は,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。(平成4年・問7) |
1.「当該契約が宅地建物取引業者の媒介によるものであるときは,契約に別段の定め
があっても,手付は解約手付となる。」
【正解:×】 ◆解約手付の推定と別段の定め 「宅地建物取引業者の媒介」というのは、この取引が非・宅建業者間のものであることを暗示しており、この問題全体としては宅建業法の規定ではなく、“民法の規定及び判例”に従うことになります。 手付の交付は当事者間に定めがない場合は“解約手付”と推定(判例)されますが、契約を締結した証拠としての“証約手付”、債務不履行の場合の“違約手付”などの「別段の定め」があればその定めに従います。
▼ “宅地建物取引業法の規定(第39条2項)”によれば、手付の交付は“宅建業者自ら売主のときは解約手付”となりますが、本問の場合は、宅建業者自らが売主ではなく「媒介(仲介)」であり、宅地建物取引業法には宅建業者が媒介をする場合の手付を規定したものはありません。(媒介で業者が買主から預かった手付は「預り金」になります。) |
2.「解約手付の契約は,売買契約と同時に締結しなければ,効力を生じない。」
【正解:×】 ◆手付契約の締結時期 “解約手付”の契約は、売買契約にもとづいた別の特約であり、当該売買契約が終了しないうちは、売買契約と異なる時期に解約手付の契約をすることもでき、その効力に変わりありません。 なお、売買契約と同時に締結しないと効力を生じないのは、「買戻しの特約(第579条)」です。 ▼手付の交付のときに当事者でなされる合意を「手付契約」と言います。 |
3.「買主が手付を交付した後,契約に基づいて中間金の支払いを済ませた場合でも,
契約に別段の定めがなく,売主が履行に着手していなければ,買主は,手付を放棄して,
当該契約を解除することができる。」(類 : 昭和48,昭和56,昭和63,平成12)
【正解:○】 ◆手付放棄による解除の時期
反対の意思表示がされていないかぎり、解約手付を交付した者は手付を放棄する意思表示によって、手付を受けた者は手付の倍額を返還して、どちらも解除することができます。(大審院・大正3.12.8、最高裁・昭和24.10.4) 解約手付による解除については、条文規定(第557条)によれば、当事者の一方が履行に着手するまで解約できるとなっています。 しかし、判例によれば、解約手付が交付されたとき、自己が履行に着手していても、相手方が履行に着手するまでの間は、手付解約をすることができる、とされています。(最高裁・昭和40.11.24) (判例では、"当事者の一方"を「解除される側」を意味すると解釈しています。つまり、『履行に着手した者に対しては手付による解除はできない』ということです。) 本肢の場合、解除しようとしている買主が、“中間金支払い” という履行に着手していても、相手方の売主はまだ履行に着手していないので、相手方の立場を裏切るものとは解されず、また別段の定めもないため、この場合の買主は手付放棄で解除できます。 |
●履行着手後の解除−判例 |
民法557条1項は強行規定ではなく任意規定なので,履行に着手した後でも解除できる旨の特約は有効である。(大審院・昭和14.5.26)
→ これは特約がある場合のことです。特約がなければ、原則どおり「相手方が履行期前ならば解除できる」で考えます。 |
4.「買主が手付を交付した後,売主の責めに帰すべき事由により売主の債務が
履行不能となった場合において,損害賠償額の定めがないときは,その額は手付
の倍額とされる。」(類 : 昭和63)
【正解:×】 ◆債務不履行(履行不能)による解除での損害賠償 本肢での損害賠償は債務不履行によるものであり、手付の倍戻しを規定している民法第557条の規定とは別のものです。 損害賠償額の予定をしていなかったとき、原則として債務者は通常生ずるべき範囲内の実際の損害額を賠償することになります(第416条)。 したがって、民法の規定および判例のどちらによっても、損害賠償額と手付金額とは連動していませんから、本肢は×になります。 |