Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

債務不履行に関する問題


【正解】

× × ×

Aを売主、Bを買主とする甲土地の売買契約に関する次のそれぞれの記述は、民法の規定および判例によれば○か、×か。

1.「Bが約定期日に代金を支払わないとき、Aは、甲土地の引渡しを提供することなく、相当

の期間を定めてBに履行の催告をし、その期間内にBの履行のないとき、Aは当該契約を

解除することができる。」

【正解:×

 売買契約は、双方に義務(引渡しと代金の支払い/「双務義務」ともいう)のある契約であるため(民法第533条、第555条)、買主Bが、約束の日に代金を支払わないときであっても、少なくとも売主Aは、甲土地の引渡しを行わなければ、買主Bに履行遅滞の責任を問うことはできません(第541条)。

2.「Bのローンが不成立のときは、契約を解除できる旨の特約がある場合、ローンの不成立

が確定すれば、Bが意思表示をするまでもなく、当該契約は解除される。」

【正解:×

 法律行為の効力を、将来発生するかどうか不確実な事実に係らせるものを「停止条件」といい(第127条1項)、本問の場合ローンの不成立が確定すれば、Bに解除する権利は生じます。

 この場合、解除するかどうかはBの一存(自由意思)にかかっており、したがって、解除権を有するBがAに意思表示をしなければ、当該契約は解除されません(第540条)。

3.「Bのローンが甲土地の引渡し期日までに成立しないとき契約は解除される旨の特約

がある場合、当該期日までにローンが成立しなければ、Bが意思表示をするまでもなく、

当該契約は解除される。」

【正解:

 設問2と似通った表現の設問ですが、細かな違い(“解除できる”と“解除される”)に注意してください。

Bのローンが甲不動産の引渡し期日までに成立しないとき、契約は“解除される” 旨の特約とは「解除条件」といい、その条件が成就したとき(当該期日までにローンの不成立が確定)、自動的に効力は失われる(第127条2項)ため、Bの意思表示の有無に関係なく、当該契約は解除されます。

4.「当該契約につき違約金を定めていたとき、当該契約がAの債務不履行により解除され

た場合、Bは、実際の損害額が違約金より多ければ、これを証明することにより、Aに違約

金の増額を請求することができる。」

【正解:×

 違約金は、“損害賠償額の予定”と推定され(第420条3項)、当事者が損害賠償の額を予定していたとき、債務不履行があれば、過失の有無や損害の大小その他にかかわらず、債務者に予定の賠償額を自動的に支払わせるのが、“損害賠償額の予定”の趣旨であり、その予定額の増減を請求することはできず、裁判所でも増減できません(第420条1項)。


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