Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
担保責任に関する問題3
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | ○ | ○ | ○ |
売主をA,買主をBとするA所有の甲土地の売買契約に関する次のそれぞれの記述は,民法の規定及び判例によれば,○か×か。 |
1.「甲土地が産業廃棄物を埋め戻して整地されたものであったため,Bがその目的を達成できない場合,善意のBは,そのことを知ったときより1年以内であれば,契約の解除と合わせて損害賠償を請求できる。」 |
【正解:○】 隠れた瑕疵(モノの不完全な点、キズ)のため、その目的を達成できない買主は、その瑕疵を“知ってから” 「1年以内」は設問文の記述のようにすることができます(民法第570条)。 <参考> 強制競売の場合(第568条)の競落人には、この権利はありません(第570条但し書き)。 |
買主 | 損害賠償 | 解除 | 除斥期間 | |
隠れた瑕疵 | 善意無過失 | ○ | ○ | 知ったときから1年 |
悪意 | Φ | Φ | Φ |
2.「甲土地の代金を登記簿の表示面積をもとに単位当たりの単価を乗じて定めた場合,実測面積が登記簿面積を超えていたときであっても,AはBに対し代金の増額を請求することができない。」 |
【正解:○】 登記簿の地積は実際の面積と一致していないことも多く(特に明治、大正時代の登記簿の表示面積は不正確なものが多い)、たとえ実際の地積が指示したものより超過していた場合であっても、登記簿記載の地積をもって表示したとき、第565条で規定する“数量指示の売買”に該当せず、単に“土地を特定するもの”と解されます(判例)。 したがって、この場合の売主には、代金の増額請求は認められません。 |
3.「AがBと甲土地の売買契約をした後において,Aが甲土地をCに売却し,Cに移転登記がされたとき、Cは悪意であってもBに対抗できる。」 |
【正解:○】 B 不動産に関する物権の動き(移動・変更)を、第三者に主張(対抗)するには、不動産登記法の定めるところにより、その登記が必要(第177条)とされます。 つまり、登記あるCが主張でき、善意・悪意の問題とはなりません。 ただし、例外として、CがBの登記を詐欺や強迫などにより妨害した場合であれば、Cは自らの登記の効力を主張できません(不動産登記法第4条)。 |
4.「Aは,甲土地が自己のものと過失なく信じていたが,甲土地はDのものであって,甲土地をBに移転できなかったとき,Aは損害を賠償して契約の解除をすることができ,Bが悪意の場合であれば,AはBにその旨を通知するだけで解除できる。」 |
【正解:○】 他人物を自分の物と思っていた善意の売主は、救済の必要があり、設問文の記述のように、相手方を善意・悪意に区分けして、契約の解除ができます(第562条)。 <参照条文>〔民法第562条〕 [1]売主が知らないで他人の権利(物)を売る契約を結んだときは、売主自身も、買主に“損害賠償”をして、“契約を解除”することができる。 [2]売主が自分の権利でないことを知らずにいて、「買主がこのことを知っていた(悪意)」ときには、その権利を移転することができないことを“通知”するだけで、“契約の解除”ができる。この場合は、損害賠償をする必要はない。 |
買主の知・不知 | 他人物であることに善意の買主ができること | 根拠条文 |
買主が善意のとき | 損害賠償して,売主から解除できる。
解除+損害賠償 |
562条1項 |
買主が悪意のとき | 権利移転できなかったことを通知して売主から解除
できるが,損害賠償は不要。 |
562条2項 |
<おことわり> 「設問2」に関して、「実務ではこんなヘボい取引なんかしてネーヨ」なんておっしゃらないで下さいね。 あくまでも“民法の規定および判例”の範囲による設問だからです。 これもまた「宅建試験」の抱える問題の一つでしょうか? |