Brush Up! 権利の変動篇
担保責任の過去問アーカイブス 平成14年・問9
隠れた瑕疵
AがBに建物を売却し,代金受領と引換えに建物を引き渡し後に,Bがこの建物に隠れた瑕疵があることを発見したが,売主の瑕疵担保責任についての特約はない。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。(平成14年・問9) |
1.「Bは,この瑕疵がAの責めに帰すべき事由により生じたものであることを証明した場合に限り,この瑕疵に基づき行使できる権利を主張できる。」 |
2.「Bは,この売買契約を解除できない場合でも,この瑕疵により受けた損害につき,Aに対し賠償請求できる。」 |
3.「Bが,Aに対し,この瑕疵に基づき行使できる権利は,Bが瑕疵を知った時から1年以内に行使しなければならない。」 |
4.「Bは,この瑕疵があるために,この売買契約を締結した目的を達することができない場合に限り,この売買契約を解除できる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | ○ |
1.「Bは,この瑕疵がAの責めに帰すべき事由により生じたものであることを証明した場合に限り,この瑕疵に基づき行使できる権利を主張できる。」 |
【正解:×】 ◆隠れた瑕疵 : 無過失責任 瑕疵担保責任は無過失責任です。売主の過失は要件ではないため,売主に過失がなくても,売主は担保責任を負います。 ▼民法570条では「売買の目的物に隠れたる瑕疵があるとき」となっていますが,この瑕疵はものの瑕疵〔物理的な瑕疵〕だけではなく,法律や行政上の制限を受ける「法律的な瑕疵」も含むものとされています。(最高裁・昭和41.4.14) もし,瑕疵が隠れたものではないときは,民法565条の一部滅失の担保責任になります。 |
2.「Bは,この売買契約を解除できない場合でも,この瑕疵により受けた損害につき,Aに対し賠償請求できる。」 |
【正解:○】 ◆隠れた瑕疵 : 善意無過失ならば,買主は損害賠償請求できる 売買の目的物に買主の知らなかった瑕疵があったときは,買主は損害賠償を請求することができます。(570条) 解除することができるのは,契約の目的を達成できないときに限られています。 したがって,本肢の『解除できない場合でも,賠償請求できる』という記述は正しい記述です。 |
買主 | 損害賠償 | 解除 | 除斥期間 | |
隠れた瑕疵 | 善意無過失 | ○ | ○ | 知ったときから1年 |
悪意 | Φ | Φ | Φ |
3.「Bが,Aに対し,この瑕疵に基づき行使できる権利は,Bが瑕疵を知った時から1年以内に行使しなければならない。」 |
【正解:○】 ◆隠れた瑕疵: 除斥期間は,知ったときから一年以内 売買の目的物に『隠れた瑕疵』があったとき,買主が契約時にそのことについて善意無過失であり,発見したときから1年以内であれば,損害賠償請求や,(契約の目的を達成できないならば)解除権を行使することができます。 この行使方法について,判例では『解除や損害賠償請求は裁判外の意思表示でもよい』としています(最高裁・平成4.10.20)が,損害賠償請求については,債務不履行から生じた債権なので,意思表示の時を起算点とするのではなく,引渡しのときから10年の消滅時効にかかるとしています。(最高裁・平成13.11.27) |
4.「Bは,この瑕疵があるために,この売買契約を締結した目的を達することができない場合に限り,この売買契約を解除できる。」 |
【正解:○】 ◆隠れた瑕疵 : 契約を達成できないときに限り,善意無過失の買主は解除できる 売買の目的物に買主の知らなかった瑕疵があったときは,契約の目的を達成できないときに限り,解除することができます。 |