Brush Up! 権利の変動篇
担保責任の過去問アーカイブス 隠れた瑕疵 昭和45年
Aは,Bから家屋を買受けたが,後になってその家屋の外見上わかっていない個所の床板が腐っていたことがわかった。この場合の法律関係についての次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和45年) |
1.「床板が腐っていたことについて,Bに故意または過失が認められない限り,AはBに対して損害賠償を請求することができない。」 |
2.「AB間の売買は特定物である家屋の引渡しを目的とするものであるから,Bは当該家屋を現状のままでAに引き渡せばよく,引渡し後においては,いかなる責任も負うことはない。」 |
3.「Aは,床板が腐っていたために当該家屋を買った目的が達せられなくなる場合には,Bに売買代金の減額を請求することができるが,契約の解除はBに過失があるときでなければできない。」 |
4.「Bは床板が腐っていたことを知りながらその事実をAに告げずに当該家屋を売った場合には,Bは,たとえ無担保の特約があったとしても,かし担保責任を免れることはできない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
1.「床板が腐っていたことについて,Bに故意または過失が認められない限り,AはBに対して損害賠償を請求することができない。」 |
【正解:×】 ◆売主の無過失責任 担保責任は,判例・通説とも,売主の無過失責任と解されています。売主Bに故意や過失がなくても担保責任を負います。⇔債務不履行の場合は,売主の帰責事由が必要。 |
2.「AB間の売買は特定物である家屋の引渡しを目的とするものであるから,Bは当該家屋を現状のままでAに引き渡せばよく,引渡し後においては,いかなる責任も負うことはない。」 |
【正解:×】 ◆担保責任と引渡し 民法483条では,確かに『債権の目的が特定物の引渡しであるときは弁済者はその引渡しをするべき時点での現状で引き渡す』という規定があります。 しかし,担保責任はこの引渡しの規定とはまた別の話です。したがって,『引渡し後においては,いかなる責任も負うことはない』というのは誤りです。 |
3.「Aは,床板が腐っていたために当該家屋を買った目的が達せられなくなる場合には,Bに売買代金の減額を請求することができるが,契約の解除はBに過失があるときでなければできない。」 |
【正解:×】 ◆目的が達成できないときは解除できる 「外見上わかっていない個所の床板が腐っていた」というのは『隠れた瑕疵』に該当します。 売買の目的物に『隠れた瑕疵』があるときは,善意無過失の買主は,損害賠償を請求でき,目的が達成できない場合には契約を解除することができます。(570条) ・隠れた瑕疵では代金減額請求はできません。(最高裁・昭和29.1.22) ・目的が達せられなくなる場合には善意無過失の買主は契約を解除できますが,肢1で見たように売主Bの過失は要件ではなく,瑕疵担保責任は無過失責任です。(570条) したがって,この肢は×になります。 ▼判例では,隠れた瑕疵がありその修繕が可能であっても,そのために著しく多額の費用がかかる場合には,もはや契約の目的を達することはできないとし,このような場合には解除できるとしました。(大審院・昭和4.3.30) |
買主 | 損害賠償 | 解除 | 除斥期間 | |
隠れた瑕疵 | 善意無過失 | ○ | ○ | 知ったときから1年 |
悪意 | Φ | Φ | Φ |
4.「Bは床板が腐っていたことを知りながらその事実をAに告げずに当該家屋を売った場合には,Bは,たとえ無担保の特約があったとしても,かし担保責任を免れることはできない。」 |
【正解:○】 ◆担保責任免除の特約 担保責任は任意規定なので,当事者の合意で免除したり加重する特約も有効です。〔無担保の特約とは,担保責任を免除する特約を意味します。〕(572条) しかし,いくら当事者に担保責任免除の特約があったとしても,売主が知っていながら告げなかった場合は信義則に反するため,売主は担保責任を免れることはできません。 |