売主Ａは，Ｃ所有の土地・甲を譲り受けたうえでＢに引き渡すつもりで，買主Ｂと土地・甲の売買契約を締結したが，Ｃから土地・甲の所有権を取得することができなかった。この場合における次の記述のうち，正しいものはどれか。(昭和48年)

２．「Ａは，Ｂが契約締結時にＡに所有権がないことを知らなかった場合には，損害を賠償して契約を解除できる。」

４．「Ｂは，契約締結時にＡに所有権がないことを知っていた場合にも，契約を解除できる。」

【正解：×】

◆他人物売買は無効ではない

　　他人物売買は有効に成立し，売主には，他人から取得して買主に移転する義務(560条)があり，売主が買主に移転できないとき(561条)に担保責任を負います。

２．「Ａは，Ｂが契約締結時にＡに所有権がないことを知らなかった場合には，損害を賠償して契約を解除できる。」

【正解：ともに×】

◆売主からの解除＝売主が他人物であることに善意の場合のみ

　他人物売買で売主から解除できるのは，売主が，売買の目的物が他人の物であることを知らないで，買主に権利移転できなかった場合に，許されています。(562条)　

　肢２，肢３とも，買主Ｂの善意・悪意は書いてありますが，売主Ａが善意であったとは書いてないため，売主から解除できるかどうか判断できません。

４．「Ｂは，契約締結時にＡに所有権がないことを知っていた場合にも，契約を解除できる。」

【正解：○】

◆他人物売買〔全部〕悪意の買主からも，解除できる

　他人物売買〔全部〕では，悪意の買主からも解除できます。ただし，悪意の買主は損害賠償の請求をすることはできません。

　⇔一部他人物の場合は，悪意の買主も代金減額請求ができますが，解除することはできません。

　⇒　上記は，他人物の所有権移転ができないときに，売主に故意or過失がないときの原則です。売主に故意or過失があるときは，買主が悪意でも，買主は債務不履行責任の追及をすることができるので，債務不履行としての損害賠償請求をすることができます。(415条，543条，最高裁・昭和41.9.8)