Brush Up! 権利の変動篇

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解除できるか問う問題 : 用益物権・他人物(全部)・担保物権・隠れた瑕疵 昭和53年


は,建物を建てる目的でから土地の譲渡を受ける契約を結んだ。次に記述する場合において,が,の意思に反してまで契約の解除をなしえないのはどれか。ただし,AB間には解約手付の授受はなく,また解約についての特約もないものとする。(昭和53年)

1.「当該土地には,建物所有を目的とする地上権がのために設定されており,に対して地上権を対抗できる場合。」

2.「当該土地が,の所有でない場合。ただし,から当該土地を購入することになっており,現在,売買価格についての最終的な調整が残されているだけの状況にある。」

3.「当該土地には,AB間の契約時にすでに抵当権が設定してあったところ,これが実行され,が土地の所有権を失った場合。」

4.「当該土地は,都市計画道路の区域内の土地であって,建物を建てても将来撤去しなければならないことが判明した場合。」

●要注意
 この問題のように,『〜できないものはどれか』という出題形式では意外にマークミスをすることが多いようです。このような問題のときは肢ごとに『できる』,『できない』とメモしておき,最後に,それを確認しながらマークするようにすれば,マークミスを防ぐことができます。

【正解】

× × ×
1.「当該土地には,建物所有を目的とする地上権がのために設定されており,に対して地上権を対抗できる場合。」

【正解:×

◆用益権などの設定

  売買の目的物の土地の上に第三者の用益権が設定されているときは,使用収益に制限を受けることになるので,善意の買主は,それだけで損害賠償の請求をすることができます。さらに,契約を締結した目的を達成することができない場合は解除することもできます。(566条)

 家を建てる目的で土地を買うのに,その土地に地上権があったのでは契約の目的を達成することはできません。

 したがって,買主は解除することができます。

    買主  損害賠償  解除  除斥期間
 用益権などの設定  善意      知ったときから1年
 悪意  Φ  Φ   Φ

2.「当該土地が,の所有でない場合。ただし,から当該土地を購入することになっており,現在,売買価格についての最終的な調整が残されているだけの状況にある。」

【正解:

◆他人物売買の担保責任は,最終的に所有権が移転できなかったとき

 他人物売買では,売主が最終的に買主に所有権を移転できなかったときに初めて,買主は解除することができます。(561条)

 当該土地が,売主の所有ではなくても,『売主は第三者から当該土地を購入することになっており,現在,売買価格についての最終的な調整が残されているだけの状況』では解除することはできません。

 したがって,この肢2が正解肢になります。

     買主  解除  損害賠償  除斥期間
 全部他人物売買  善意      なし
 悪意    ×  なし

3.「当該土地には,AB間の契約時にすでに抵当権が設定してあったところ,これが実行され,が土地の所有権を失った場合。」

【正解:×

◆抵当権の実行により所有権を失ったときは,善意悪意に関係なく解除できる

 抵当権の実行によって買主が所有権を失った場合は,買主の善意・悪意にかかわらず,解除でき,損害があれば損害賠償請求することもできます。(567条)

 したがって,買主は解除することができます。

    買主  解除  損害賠償  除斥期間
 抵当権による所有権の喪失  善意      ない
 悪意      ない

4.「当該土地は,都市計画道路の区域内の土地であって,建物を建てても将来撤去しなければならないことが判明した場合。」(類題・平成8年・問8)

【正解:×

◆隠れた瑕疵

 判例では,『隠れた瑕疵』は物理的な瑕疵にとどまらず,法律などによる制限も該当するとしています。

 売買の目的物に買主の知らなかった瑕疵があって,契約の目的を達成できないときは,買主は解除することができます。(570条)

 本肢では,『建物を建てても将来撤去しなければならないことが判明した』とあるので,契約の目的が達成できない場合に該当すると考えられます。

 したがって,買主は解除することができます。

〔例〕判例で『隠れた瑕疵』にあたるとされたもの

・工場用地として土地を買ったら、河川法上の制限で建築物が建てられない。

・宅地造成しようとして山林を買ったら、森林法上の制限で宅地が造成できない。

●隠れた瑕疵  物理的瑕疵
 法律的な瑕疵(障害)
    買主  損害賠償  解除  除斥期間
 隠れた瑕疵  善意無過失      知ったときから1年
 悪意  Φ  Φ   Φ

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