Brush Up! 権利の変動篇
担保責任の過去問アーカイブス
他人物売買 昭和54年
Aは,B所有の土地を購入するめどがついたと思い,当該土地をAが売主となってCに売る契約を結んだ。ところがAB間の交渉は値段の折り合いがつかず,BはDに当該土地を売却してしまった。AC間の契約関係について次のうち正しいものはどれか。(昭和54年) |
1.「Aは当該土地の所有権を得たことは一度もないのであるから,AC間の売買契約は無効である。」 |
2.「CがA所有の土地であると信じて契約を結んだときは,Cは契約の解除を行うことができ、さらに損害賠償も合わせて請求することができる。」 |
3.「AはCに対し損害を賠償して契約を解除することができる。」 |
4.「CがAに所有権がないことを知っていた場合には,Cは契約の解除も損害賠償の請求もすることができない。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | × | × |
1.「Aは当該土地の所有権を得たことは一度もないのであるから,AC間の売買契約は無効である。」 |
【正解:×】 ◆他人物売買は有効 他人の権利を売買にする契約は有効で,売主はその権利を取得して買主に移転する義務を負います。(560条) |
■他人物売買での所有権移転の時期 当事者に特約がなければ,売主が,所有者から目的物を取得する契約を締結したと同時に,所有権は直ちに買主に移転します。(大審院・大正8.7.5) |
2.「CがA所有の土地であると信じて契約を結んだときは,Cは契約の解除を行うことができ、さらに損害賠償も合わせて請求することができる。」 |
【正解:○】 ◆善意の買主 : 解除+損害賠償請求 CはA所有の土地であると信じて契約を結んだ→Cは他人物売買について善意 売主が買主に移転できないときは,買主は他人物売買であったことに善意・悪意問わず,契約を解除することができますが,解除に加えて損害賠償を請求するには,買主は善意でなければいけません。(561条) |
買主 | 解除 | 損害賠償 | 除斥期間 | |
全部他人物売買 | 善意 | ○ | ○ | なし |
悪意 | ○ | × | なし |
⇒ 上記は,他人物の所有権移転ができないときに,売主に故意or過失がないときの原則です。売主に故意or過失があるときは,買主が悪意でも,買主は債務不履行責任の追及をすることができるので,債務不履行としての損害賠償請求をすることができます。(415条,543条,最高裁・昭和41.9.8) |
3.「AはCに対し損害を賠償して契約を解除することができる。」 |
【正解:×】 ◆他人物売買で善意の売主は解除できる 他人物売買では,売主が売買の目的物が他人の物であることを知らないで,買主に権利移転できなかった場合,善意の売主からも解除することができます。(562条) 本肢では,売主Aは自己の所有ではないことを知っている〔悪意〕ので,売主Aから解除することはできません。
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4.「CがAに所有権がないことを知っていた場合には,Cは契約の解除も損害賠償の請求もすることができない。」 |
【正解:×】 ◆悪意の買主 : 解除することはできるが,損害賠償を合わせて請求することはできない 買主Cが売主Aに所有権がないことを知っていた場合には,Cは契約の解除はできますが,売主に所有権を移転できなかったことについて過失や故意がない場合は,それに合わせて損害賠償の請求をすることはできません。(561条) |