Brush Up! 権利の変動篇

担保責任・債務不履行の過去問アーカイブス 

隠れた瑕疵・抵当権・履行不能・履行遅滞 昭和59年・問6


は,所有の建物を購入した。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。(昭和59年・問6)

1.「建物に隠れた瑕疵があった場合,は,に損害賠償を請求することができるが,契約を解除することはできない。」

2.「建物に抵当権が設定されていた場合,が善意であるときに限り,契約を解除することができる。」

3.「建物が引き渡し前に,の失火により全焼したときは,は直ちに契約を解除することができる。」

4.「約定の期日に建物を引き渡さないときは,は直ちに契約を解除することができる。」

【正解】

× × ×

1.「建物に隠れた瑕疵があった場合,は,に損害賠償を請求することができるが,契約を解除することはできない。」

【正解:×

◆隠れた瑕疵

 売買の目的物に『隠れた瑕疵』があるときは,善意無過失の買主は,損害賠償を請求でき,目的が達成できない場合には契約を解除することができます。(570条)

 本肢では,『損害賠償を請求することができるが,契約を解除することはできない』とあるので,×です。

    買主  損害賠償  解除  除斥期間
 隠れた瑕疵  善意無過失      知ったときから1年
 悪意  Φ  Φ   Φ

2.「建物に抵当権が設定されていた場合,が善意であるときに限り,契約を解除することができる。」類・平成元年

【正解:×

◆担保物権が設定されていたとき

 買主は善意・悪意にかかわらず抵当権の実行によって所有権を失ったときに解除することができますが,本肢では「所有権を失った」わけではないので,解除することはできません。(567条)

抵当権の登記があるときは,原則として,買主は抵当権消滅請求の手続きが終わるまでその代金の支払を拒むことができます。(578条)

    買主  解除  損害賠償  除斥期間
 抵当権による所有権の喪失  善意      ない
 悪意      ない
3.「建物が引き渡し前に,の失火により全焼したときは,は直ちに契約を解除することができる。」

【正解:

◆債務不履行(履行不能)

 契約締結後売主〔引渡し債務の債務者〕の帰責事由によって,目的物の全部または一部が滅失し履行不能となったときは,買主〔引渡し債務での債権者〕は,催告をしないで直ちに解除することができます。〔履行不能なので催告しても売主は応じることはできませんから,催告は無意味です。〕(543条)

4.「約定の期日に建物を引き渡さないときは,は直ちに契約を解除することができる。」

【正解:×

◆履行遅滞

 履行不能による債務不履行では解除をするのに催告は不要でしたが,履行遅滞による債務不履行解除では,解除の前に催告が必要です。

 当事者の一方がその債務を履行しないときは,その相手方は,相当の期間を定めて履行を催告し,その期間内に履行がされないときに,契約を解除することができます(541条)

 本肢では,『(催告なしに)直ちに解除できる』とあるので,×です。


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