Brush Up! 権利の変動篇 過去問のSummary
担保責任 : 隠れた瑕疵の過去問セレクション
民法の規定によれば,次の記述は○か×か。 |
1.「土地について,Aを売主,Bを買主とする売買契約が成立した。その土地に隠れた瑕疵があったときは,Aが瑕疵担保責任を負わない旨の特約をしていた場合であっても,Aは,自ら知っていながらBに告げなかった瑕疵については,瑕疵担保責任を免れることはできない。」(昭和60年・問5) |
2.「AからBが建物を買い受ける契約を締結した。Bが,この建物の引渡し後,建物の柱の数本に,しろありによる被害があることを発見した場合は,AがAB間の契約締結時にこのことを知っていたときでないと,Bは,Aに損害賠償の請求をすることはできない。〔売主の担保責任についての特約はない。〕」(平成11年・問10) |
3.「Aは,B所有の建物を購入した。建物に隠れた瑕疵があった場合,Aは,Bに損害賠償を請求することができるが,契約を解除することはできない。」(昭和59年・問6) |
4.「その土地に隠れた瑕疵があって,買主がそのことを知らなかったときは,買主は,その事実を知ったとき,瑕疵の程度に関係なく,契約を解除することができる。」(平成元年・問4) |
5.「AがBから建物所有の目的で土地を買い受ける契約をしたが、AB間に担保責任に関する特約はなかった。この土地の8割が都市計画街路の区域内であることが容易に分からない状況になったため、Aがこのことを知らなかった場合で、このため契約の目的を達することができないとき、Aは、Bに対して契約を解除することができる。」(平成8年・問8) |
6.「不動産の売買契約が行われた後,売買の目的物である不動産に隠れた瑕疵があったことが判明した場合,買主は契約の解除または損害賠償の請求をすることができるが,民法の規定によればこの契約の解除または損害賠償の請求をなし得る期間は,買主が瑕疵がある旨を知った時から1年以内である。」(昭和56年・問6改) |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 |
○ | × | × | × | ○ | ○ |
■担保責任免除の特約
1.「土地について,Aを売主,Bを買主とする売買契約が成立した。その土地に隠れた瑕疵があったときは,Aが瑕疵担保責任を負わない旨の特約をしていた場合であっても,Aは,自ら知っていながらBに告げなかった瑕疵については,瑕疵担保責任を免れることはできない。」(昭和60年・問5)○ |
【正解:○】 ◆担保責任免除の特約 担保責任は任意規定なので,当事者の合意で免除したり加重する特約も有効です。〔無担保の特約とは,担保責任を免除する特約を意味します。〕(572条) しかし,いくら当事者に担保責任免除の特約があったとしても,売主が知っていながら告げなかった場合は信義則に反するため,売主は担保責任を免れることはできません。 |
■損害賠償請求
2.「AからBが建物を買い受ける契約を締結した。Bが,この建物の引渡し後,建物の柱の数本に,しろありによる被害があることを発見した場合は,AがAB間の契約締結時にこのことを知っていたときでないと,Bは,Aに損害賠償の請求をすることはできない。〔売主の担保責任についての特約はない。〕」(平成11年・問10) |
【正解:×】 ◆無過失責任 担保責任は売主の無過失責任です。売主Aは契約当時しろありについて知らなくても,担保責任を負います。〔判例・通説〕 買主の知らない『隠れた瑕疵』があったとき,買主は損害賠償請求をすることができ,それにより契約の目的が達成できないときは解除することができます。
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■解除
3.「Aは,B所有の建物を購入した。建物に隠れた瑕疵があった場合,Aは,Bに損害賠償を請求することができるが,契約を解除することはできない。」(昭和59年・問6) |
【正解:×】 ◆解除 隠れた瑕疵があり,それにより契約の目的が達成できないときは解除できるので,×です。 |
4.「その土地に隠れた瑕疵があって,買主がそのことを知らなかったときは,買主は,その事実を知ったとき,瑕疵の程度に関係なく,契約を解除することができる。」(平成元年・問4)× |
【正解:×】 ◆解除は「契約の目的が達成できないとき」 隠れた瑕疵があって解除できるのは,それにより契約の目的が達成できないときに限られます。 ▼判例では,隠れた瑕疵がありその修繕が可能であっても,そのために著しく多額の費用がかかる場合には,もはや契約の目的を達することはできないとし,このような場合には解除できるとしました。(大審院・昭和4.3.30) |
5.「AがBから建物所有の目的で土地を買い受ける契約をしたが、AB間に担保責任に関する特約はなかった。この土地の8割が都市計画街路の区域内であることが容易に分からない状況になったため、Aがこのことを知らなかった場合で、このため契約の目的を達することができないとき、Aは、Bに対して契約を解除することができる。」(平成8年・問8) |
【正解:○】 ◆法律的な制限も隠れた瑕疵になる 判例では,『隠れた瑕疵』は物理的な瑕疵にとどまらず,法律などによる制限も該当するとしています。(最高裁・昭和41.4.14) 本肢では,『土地の8割が都市計画街路の区域内』となっていて,建物を建ててもいずれ立ち退くなどのことが考えられ,法律などの制限による瑕疵に該当します。 Aはこのことを容易にわかる状況ではなかったことから,Aは瑕疵については善意無過失なので,契約の目的が達成できないことを理由に解除することができます。 〔例〕判例で『隠れた瑕疵』にあたるとされたもの ・工場用地として土地を買ったら、河川法上の制限で建築物が建てられない。 ・宅地造成しようとして山林を買ったら、森林法上の制限で宅地が造成できない。
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■除斥期間
6.「不動産の売買契約が行われた後,売買の目的物である不動産に隠れた瑕疵があったことが判明した場合,買主は契約の解除または損害賠償の請求をすることができるが,民法の規定によればこの契約の解除または損害賠償の請求をなし得る期間は,買主が瑕疵がある旨を知った時から1年以内である。」(昭和56年・問6改) |
【正解:○】 ◆知ってから一年以内に行使 売買の目的物に『隠れた瑕疵』があったとき,買主は,発見したときから1年以内であれば,損害賠償請求や,契約の目的を達成できないならば解除をすることができます。 行使方法について,判例では解除や損害賠償請求は裁判外の意思表示でもよいとしています。(最高裁・平成4.10.20) ●関連・解除による代金返還請求と損害賠償請求の消滅時効 解除の原状回復による代金返還請求は,意思表示の時を起算点として10年の消滅時効に服することになります。 しかし,損害賠償請求については,判例では,意思表示の時を起算点とするのではなく,引渡しのときから10年の消滅時効にかかるとしています。(最高裁・平成13.11.27)〔ただし,住宅品確法などで当事者間に10年を超える担保責任の定めがある場合を除く。〕 |