Brush Up! 権利の変動篇  過去問のSummary

担保責任 : 一部他人物の過去問セレクション


民法の規定によれば,売買の目的物の一部が他人物であったときの次の記述は,○か×か。

1.「その土地の一部は他人のものであって,からその部分の所有権を取得してに移転することができなかった。この場合,は,その部分の所有者がであることを知らなかった場合に限り,代金の減額を請求することができる」(昭和62年・問4)

2.「からの所有地を買い受ける契約を締結した。その土地の一部が他人のものであって,に権利を移転することができず,残りの土地だけではが買うことができないとき,その善意悪意に関係なく,契約を解除することができる。」(平成3年・問11)

3.「売買の目的の一部が他人に属しているため売主がこれを買主に移転することができないときは,買主は,代金の減額請求をすることはできないが,契約を解除することはできる。」(昭和51年)

4.「から建物所有の目的で土地を買い受ける契約をしたが、AB間に担保責任に関する特約はなかった。この土地の8割の部分はの所有であるが、2割の部分がの所有である場合で、所有の部分を取得してに移転できないことをが知って契約したときでも、は、に対して契約を解除することができる。」(平成8年・問8)
5.「土地について,を売主,を買主とする売買契約が成立した。その土地の一部がに属しているため,がこれをに移転することができないときは,が悪意であっても代金の減額を請求することができるが,善意でなければそれに加えて損害賠償を請求することはできない。」(昭和60年・問5)

アウトライン−善意・悪意に関係なく,買主は,代金減額請求することができる。

    買主  代金減額  解除  損害賠償  除斥期間
 一部他人物売買  善意        知ったときから1年
 悪意    ×  ×  契約時から1年

⇔ 数量不足との対比

    買主  代金減額  解除  損害賠償  除斥期間
 数量不足・一部滅失  善意        知ったときから1年
 悪意  Φ  Φ  Φ   Φ

どんなときに売主は担保責任を負うか

 売買の目的物の一部が他人の所有であり,
 その部分の所有権を買主に移転できなかったとき
(563)

 〔共有者の一人が自分の持分を超えて売るケースや,自己所有の土地に他人所有の土地を混ぜて売ってしまったケースなど。〕

 ベースとなるのは代金減額

 解除しないならば,代金減額(善意・悪意) 

 残った部分だけでは買わないとき解除(善意)

 損害賠償は善意なら,代金減額・解除と併せてできる。

【正解】

× × × ×

■代金減額請求

1.「その土地の一部は他人のものであって,からその部分の所有権を取得してに移転することができなかった。この場合,は,その部分の所有者がであることを知らなかった場合に限り,代金の減額を請求することができる」(昭和62年・問4)

【正解:×

◆善意悪意を問わず,代金減額請求できる

 売買された土地の一部が他人の所有であり,売主がその部分の所有権を買主に移転できないときは,買主は善意・悪意を問わず,その不足部分に応じた代金減額請求をすることができます。(563条1項)

 本肢では,『知らなかった場合に限り,代金の減額を請求することができる』とあるので×です。

一部他人物で移転できないときの担保責任の考え方

 善意・悪意の買主・代金減額請求
              └ 買主が善意で,残りでは買うことができないとき解除
              └ 買主が善意:代金減額or解除に合わせて損害賠償請求できる

盲点●代金減額請求
 数量不足・一部滅失 → 悪意のときは,減額請求できない〔善意のときだけできる〕

 一部他人物 → 悪意のときでも,減額請求できる。〔善意・悪意どちらもできる〕

■解除

2.「からの所有地を買い受ける契約を締結した。その土地の一部が他人のものであって,に権利を移転することができず,残りの土地だけではが買うことができないとき,その善意悪意に関係なく,契約を解除することができる。」(平成3年・問11)

3.「売買の目的の一部が他人に属しているため売主がこれを買主に移転することができないときは,買主は,代金の減額請求をすることはできないが,契約を解除することはできる。」(昭和51年)

4.「から建物所有の目的で土地を買い受ける契約をしたが,AB間に担保責任に関する特約はなかった。この土地の8割の部分はの所有であるが,2割の部分がの所有である場合で,所有の部分を取得してに移転できないことをが知って契約したときでも,は,に対して契約を解除することができる。」(平成8年・問8)

◆一部他人物売買では買主が善意のときだけ,解除できる

 売買された土地の一部が他人の所有であり,売主がその部分の所有権を買主に移転できないときのベースとなるのは代金減額請求で善意悪意に関係なく行使できますが,それに加えて,善意の買主残りの部分では買うことができないときは,解除することができ,それに併せて損害賠償請求をすることもできます。(563条2項,3項)

肢2 『その善意悪意に関係なく,契約を解除することができる』とあるので×

肢3 買主の善意・悪意は不明で,『代金の減額請求をすることはできないが,契約を解除することはできる』とあるので×

肢4 『知って契約したときでも、契約を解除することができる』とあるので×。全部他人物との混同を狙った出題。

【正解】

× × ×

⇔ 全部他人物との比較

     買主  解除  損害賠償  除斥期間
 全部他人物売買  善意      なし
 悪意    ×  なし

■損害賠償請求

5.「土地について,を売主,を買主とする売買契約が成立した。その土地の一部がに属しているため,がこれをに移転することができないときは,が悪意であっても代金の減額を請求することができるが,善意でなければそれに加えて損害賠償を請求することはできない。」(昭和60年・問5)

◆買主が善意ならば,損害賠償請求も合わせてできる

 売買された土地の一部が他人の所有であり,売主がその部分の所有権を買主に移転できないとき,代金減額請求または解除のどちらも,善意の買主でなければ,損害賠償を併せて請求することはできません

【正解:

●類題

1.「売買の目的物の一部が他人に属する場合,契約時に悪意であった買主は,その契約を解除することはできるが,損害賠償を請求することはできない。」

【正解:×

 売買の目的物の一部が他人に属する場合,悪意の買主は,代金減額請求はできますが,解除,損害賠償請求ともできません(563条1項,2項)


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