Brush Up! 権利の変動篇  過去問のSummary

担保責任 : 用益権などの設定の過去問セレクション


民法の規定によれば,売買の目的物に用益権の設定があったときの次の記述は,○か×か。

1.「売買の目的物が地上権,永小作権,地役権又は質権の目的になっている場合,買主が善意ならば,常に損害賠償の請求をすることができる。」

2.「売主と買主との間に土地300平方メートル1平方メートル当たり5万円として売買契約が成立した。その土地にが登記済の地上権を有していた場合でもが善意でない限り、は、担保責任を負うことはない。」(昭和52年)

3.「が1,000平方メートルの土地について数量を指示してに売却する契約をとした。その土地にが登記済みの地上権を有していて、が利用目的を達成することができなかった場合は、善意のときに限り、契約を解除することができる。」(平成5年・問8)

4.「売買の目的物である宅地の上に第三者の地上権が設定されているために契約を締結した目的を達成することができない場合,善意の買主は,売主に対して損害賠償の請求はできるが,契約の解除はできない。」(昭和51年)

5.「土地について,を売主,を買主とする売買契約が成立した。その土地が地上権の目的になっているときは,は,悪意であっても損害賠償を請求することができるが,善意であって,かつ,その土地が地上権の目的となっていることにより契約をなした目的を達することができない場合でなければ,契約を解除することはできない。」(昭和60年・問5)

アウトライン−善意の買主のみ,担保責任を追及できる

    買主  損害賠償  解除  除斥期間
 用益権などの設定  善意      知ったときから1年
 悪意  Φ  Φ   Φ

善意の買主が担保責任を追及できる要件

・ 売買の目的物に,地上権・永小作権・地役権・留置権・質権が設定されている。(使用収益が制限されている) 〔近年の出題では地上権による制限のみ〕

・対抗力のある賃貸借〔借地借家法10-1,31-1,農地法18-1等〕があったとき。(566条2項)
 → 対抗力のあるものであれば登記のないものでも担保責任を追及できる。

・目的不動産のためにあるはずの地役権がないとき。(566条2項)

【正解】

× ×

■損害賠償請求

1.「売買の目的物が地上権,永小作権,地役権又は質権の目的になっている場合,買主が善意ならば,常に損害賠償の請求をすることができる。」

【正解:

◆用益権の設定があるときは,善意の買主は,常に,損害賠償の請求ができる

…「民法講義V2・債権各論(中巻)一」(我妻榮/岩波書店)p.285

 売買の目的物に用益権などの設定があるときは,使用収益に制限を受けることになるので,善意の買主は損害賠償請求できるというのがベースで,これに,契約が達成されないときに解除することができることが加わる,と考えるのがポイント。

用益権が設定されているときの担保責任の考え方

 善意の買主・損害賠償請求
            └ 契約が達成できないとき解除することができる

 

2.「売主と買主との間に土地300平方メートル1平方メートル当たり5万円として売買契約が成立した。その土地にが登記済の地上権を有していた場合でもが善意でない限り、は、担保責任を負うことはない。」(昭和52年)

【正解:

◆買主が善意なら,用益権の設定がされているだけで担保責任を負う

■解除

3.「が1,000平方メートルの土地について数量を指示してに売却する契約をとした。その土地にが登記済みの地上権を有していて、が利用目的を達成することができなかった場合は、善意のときに限り、契約を解除することができる。」(平成5年・問8)

【正解:

◆解除の要件 : 契約の目的を達成できないとき

 解除できるのは,契約の目的を達成できないときであり,用益権が設定されているというだけでは解除することはできません。

4.「売買の目的物である宅地の上に第三者の地上権が設定されているために契約を締結した目的を達成することができない場合,善意の買主は,売主に対して損害賠償の請求はできるが,契約の解除はできない。」(昭和51年)

【正解:×

◆善意の買主は,解除・損害賠償請求ともできる

5.「土地について,を売主,を買主とする売買契約が成立した。その土地が地上権の目的になっているときは,は,悪意であっても損害賠償を請求することができるが,善意であって,かつ,その土地が地上権の目的となっていることにより契約をなした目的を達することができない場合でなければ,契約を解除することはできない。」(昭和60年・問5)

【正解:×

◆善意の買主のみ,解除・損害賠償請求ができる

 後半の解除の記述は正しいのですが,前半の損害賠償の記述がオカシイ。『買主が悪意であっても損害賠償を請求することができる』とあるので×


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