Brush Up! 権利の変動篇
手付解除の過去問アーカイブス 昭和42年
買主Aは,売主Bと土地の売買契約を締結し,手附を交付した。この場合における次の記述のうち,正しいものはどれか。なお,手附について別段の取り決めはないものとする。(昭和42年) |
1.「Bが契約の履行をしない場合,Aは,相当の期間を定めて履行を催告し,その期間内にBが履行しない場合には,債務の不履行を理由に契約を解除し,手附の返還を請求することができる。」 |
2.「Aは,契約締結後ならば,Bの契約の履行の着手の前後を問わずいつでも交付した手附を放棄して契約を解除できる。」 |
3.「Bが契約の履行をしない場合,Aはすでに手附を交付しているのであるからその手附を放棄しなければ契約を解除することはできない。」 |
4.「当事者の一方が契約の履行の着手前に,Aが手附を放棄して契約を解除した場合,Bはその生じた損害について賠償の請求ができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | × | × |
1.「Bが契約の履行をしない場合,Aは,相当の期間を定めて履行を催告し,その期間内にBが履行しない場合には,債務の不履行を理由に契約を解除し,手附の返還を請求することができる。」 |
【正解:○】 ◆債務不履行による買主からの解除−手付の返還を請求できる 手付が交付されていて債務不履行で契約が解除された場合、当事者には、原状回復義務があり、売主Bには、受領した手附金は不当利得として買主Aに全額返還する義務があります。また、債務不履行による解除での原状回復義務で手附を返還する際には、受領の時からの利息をつけなければいけません。(545条2項) 売主Bの債務不履行により解除権を行使した買主Aは、手付の返還とは別に債務不履行による損害賠償を請求できます。 ▼売主が買主の債務不履行によって解除する場合は、手附として受け取ったお金を損害賠償と相殺することもできます。 |
2.「Aは,契約締結後ならば,Bの契約の履行の着手の前後を問わずいつでも交付した手附を放棄して契約を解除できる。」 |
【正解:×】 ◆解約手附により解除できる時期
|
3.「Bが契約の履行をしない場合,Aはすでに手附を交付しているのであるからその手附を放棄しなければ契約を解除することはできない。」 |
【正解:×】 ◆解約手附による解除と債務不履行による解除は別次元 手付を交付していても当事者の債務不履行を理由に解除することができます。解約手附による解除では手附を放棄しないといけませんが,売主の債務不履行によって解除する場合には,買主は原状回復により不当利得として手附を返してもらえます。 |
4.「当事者の一方が契約の履行の着手前に,Aが手附を放棄して契約を解除した場合,Bはその生じた損害について賠償の請求ができる。」 |
【正解:×】 ◆解約手付による解除では損害賠償を請求することはできない
解約手付による解除は、債務不履行による解除ではないので、損害賠償の問題は生じません。(557条2項)
▼解約手付による解除では、契約は遡及的に消滅し、履行に着手する前なので原状回復請求権も生じません。 |