Brush Up! 権利の変動篇
手付解除の過去問アーカイブス 昭和48年
買主Aは,売主Bと土地の売買契約を締結し,手附を交付した。手附について別段の取り決めがない場合,次の記述のうち,誤っているものはどれか。(昭和48年) |
1.「当事者の一方が契約の履行の着手前に,Aが手附を放棄して契約を解除した場合,Bは手附により補填できない損害の賠償請求をし得る。」 |
2.「Aは,自らの契約に着手していても,Bが着手前であれば,手附を放棄して契約を解除できる。」 |
3.「AとBとが合意により契約を解除した場合には,Aは手附の返還を請求することができる。」 |
4.「Bが契約を履行しない場合,Aは,相当の期間を定めて履行を催告し,その期間内に履行がない場合には,債務の不履行を理由に契約を解除し,手附の返還を請求することができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | ○ |
1.「当事者の一方が契約の履行の着手前に,Aが手附を放棄して契約を解除した
場合,Bは手附により補填できない損害の賠償請求をし得る。」(類 : 平成12)
【正解:×】 ◆売主の損害 > 手付 のときの損害賠償
解約手付による解除は、債務不履行による解除ではないので、解除しても損害賠償の問題は生じません。(557条2項)
したがって、Aは、Bに手付の額以上の損害があったとしても手付との差額についてさらに賠償する必要はなく、Bは手附により補填できない損害の賠償請求をすることはできません。 ▼解約手付による解除では、契約は遡及的に消滅し、履行に着手する前なので原状回復請求権も生じません。 |
2.「Aは,自らの契約に着手していても,Bが着手前であれば,手附を放棄して契約を
解除できる。」(類 : 昭和56,昭和63,平成4,平成12)
【正解:○】 ◆買主からの解除の時期
|
3.「AとBとが合意により契約を解除した場合には,Aは手附の返還を請求することが
できる。」(類 : 昭和56)
【正解:○】 ◆合意解除−特約のない限り、手付の返還を請求できる(判例) 合意により解除した場合、特約のない限り、手付を交付した者は、手付金を受領した者に対し、不当利得として、手付金の返還請求ができます。(大審院・昭和11.8.10) ▼合意解除では、受け取った金銭を返還する場合、利息はつけなくてもよいとされています。(大審院・8.9.15)⇔債務不履行による解除での原状回復義務では、受領の時からの利息をつける。(545条2項) |
4.「Bが契約を履行しない場合,Aは,相当の期間を定めて履行を催告し,その期間
内に履行がない場合には,債務の不履行を理由に契約を解除し,手附の返還を請求
することができる。」(類 :昭和56)
【正解:○】 ◆債務不履行による買主からの解除−手付の返還を請求できる 手付が交付されていて債務不履行で契約が解除された場合、当事者には、原状回復義務があり、Bには、受領した手附金は不当利得として返還する義務があります。 Bの債務不履行により解除権を行使したAは、手付の返還とは別に債務不履行による損害賠償を請求できます。 |