Brush Up! 権利の変動篇

手付解除の過去問アーカイブス 昭和56年


は,自己の所有する宅地をに代金2,000万円で売り渡す契約を締結し,に手付として200万円を支払った。手付について他に別段の定めがない場合,次の記述のうち誤っているものはどれか。(昭和56年・問8)

1.「が契約を履行しない場合,は,相当の期間を定めて履行を催告し,その期間内にが履行しない場合には,Bは,債務不履行を理由に契約を解除し200万円の返還を請求することができる。」

2.「が合意により契約を解除した場合には,は,200万円の返還を請求することができる。」

3.「は,が契約の履行に着手するまでは,200万円を放棄して契約を解除することができる。」

4.「は,が契約の履行に着手するまでは200万円を返還すれば契約を解除することができるが,が契約の履行に着手した後は400万円を返還しなければ契約を解除することができない。」

【正解】

×

1.「が契約を履行しない場合,は,相当の期間を定めて履行を催告し,その期間

内にが履行しない場合には,は,債務不履行を理由に契約を解除し200万円の

返還を請求することができる。」(類 : 昭和48)

【正解:

◆債務不履行による買主からの解除−手付金の返還を請求できる

 手付が交付されていて債務不履行で契約が解除された場合、当事者には、原状回復義務があり、には、受領した手附金は不当利得として返還する義務があります。

 の債務不履行により解除権を行使したは、手付の額とは別に債務不履行による損害賠償を請求できます。 

2.「が合意により契約を解除した場合には,は,200万円の返還を請求する

ことができる。」(類 : 昭和48)

【正解:

◆合意解除による手付金の返還

 合意により解除した場合、特約のない限り、手付を交付した者は、手付金を受領した者に対し、不当利得として、手付金の返還請求ができます。(大審院・昭和11.8.10)

合意解除では、受け取った金銭を返還する場合、利息はつけなくてもよいとされています。(大審院・8.9.15)⇔債務不履行による解除での原状回復義務では、受領の時からの利息をつける。(545条2項)

●合意解除したときの手付の返還
1.「売買契約が合意解除されたときは,手付金受領者は,その手付を相手方に返還することを要しない。」(司法書士 : 平成13・問17・肢3)
【正解:×】            

3.「は,が契約の履行に着手するまでは,200万円を放棄して契約を解除すること

ができる。」(類 : 昭和48,昭和63,平成4,平成12)

【正解:

◆手付交付の時の買主からの解除の要件

〔判例〕自らが契約の履行に着手していても相手方が着手前であれば,
  ・買主は、手附を放棄して
  ・売主は、手附の倍額を支払うことによって
解除できる。(最高裁・昭和40.11.24)

 

●土地の引渡しは「履行の着手」
1.「土地の買主は,土地の引渡しを受けていても,所有権移転の登記を受けるまでは,手付を放棄して売買契約を解除することができる。」(司法書士 : 平成元年・問16・肢4)
【正解:×】            

 土地の引渡しは、売主が履行の着手をしていることであり、相手方(この場合は売主)が履行に着手していれば、買主は解除できないので、本肢は×となる。

4.「は,が契約の履行に着手するまでは200万円を返還すれば契約を解除する

ことができるが,が契約の履行に着手した後は400万円を返還しなければ契約を

解除することができない。」(類 : 昭和63,平成12)

【正解:×

◆手付交付のときの売主からの解除の要件

〔判例〕自らが契約の履行に着手していても相手方が着手前であれば,
  ・買主は、手附を放棄して
  ・売主は、手附の倍額を支払うことによって
解除できる。(最高裁・昭和40.11.24)

倍額の償還の意味

 「受領した手付の返還」+「買主に補償する金額」 

●履行期でも解除できるか?
1.「売主は,履行期後においては,手付の倍額を償還して売買契約を解除することはできない。」(司法書士 : 平成元年・問16・肢5)
【正解:×】            

 引っ掛け問題。履行期になっても、相手方(この場合は買主)が履行に着手していなければ、売主は解除できる。


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