Brush Up! 権利の変動篇

手付解除の過去問アーカイブス 昭和63年


買主は,売主と土地の売買契約を締結し,手付を交付したが,手付について,AB間で別段の定めをしていない。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。(昭和63年・問6)

1.「は,手付の倍額を償還すれば,いつでも契約を解除することができる。」

2.「は,の債務不履行を理由に契約を解除したときは,損害賠償を請求することができるが,その額は手付の倍額である。」

3.「は,が契約の履行に着手するまでは,手付を放棄して契約を解除することができる。」

4.「は,自ら契約の履行に着手しているときは,手付を放棄して契約を解除することはできない。」

【正解】

× × ×

1.「は,手付の倍額を償還すれば,いつでも契約を解除することができる。」

(類 : 昭和56,平成12)

【正解:×

◆手付交付のときの売主からの解除の要件

 売主は、「手付の倍額を償還すれば,いつでも契約を解除することができる」わけではありません。 

〔判例〕自らが契約の履行に着手していても相手方が着手前であれば,
  ・買主は、手附を放棄して
  ・売主は、手附の倍額を支払うことによって
解除できる。(最高裁・昭和40.11.24)

倍額の償還の意味

 「受領した手付の返還」+「買主に補償する金額」 

2.「は,の債務不履行を理由に契約を解除したときは,損害賠償を請求すること

ができるが,その額は手付の倍額である。」(類 : 平成4)

【正解:×

◆債務不履行による買主からの解除のときの損害賠償

 手付が交付されていて債務不履行で契約が解除された場合、当事者には、原状回復義務があり、には、受領した手附金を不当利得として返還する義務があります。

 の債務不履行により解除権を行使したは、手付金の返還請求権とは別に債務不履行による損害賠償を請求できます。 

 しかし、その損害賠償の額は、「手付の倍額」と決まっているわけではないので、×になります。

3.「は,が契約の履行に着手するまでは,手付を放棄して契約を解除すること

ができる。」(類 : 昭和48,昭和56,平成4,平成12)

【正解:

◆手付交付のときの買主からの解除の要件

〔判例〕自らが契約の履行に着手していても相手方が着手前であれば,
  ・買主は、手附を放棄して
  ・売主は、手附の倍額を支払うことによって
解除できる。(最高裁・昭和40.11.24)

 

4.「は,自ら契約の履行に着手しているときは,手付を放棄して契約を解除する

ことはできない。」(類 : 昭和48,昭和56,平成4,平成12)

【正解:×

◆手付交付のときの買主からの解除の要件

〔判例〕自らが契約の履行に着手していても相手方が着手前であれば,
  ・買主は、手附を放棄して
  ・売主は、手附の倍額を支払うことによって
解除できる。(最高裁・昭和40.11.24)

 


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