Brush Up! 権利の変動篇
代理の過去問アーカイブス
未成年者の代理人・代理の瑕疵・自己契約・双方代理 (平成3年・問3)
AがBから代理権を与えられて,契約を締結し,又は締結しようとする場合に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。(平成3年・問3) |
1.「Aが未成年者である場合,Bは,親権者の同意がないことを理由として,Aが締結した契約を取り消すことができる。」 |
2.「AがCにだまされて契約を締結した場合においても,Bは,Cの詐欺を知っていたときは,その契約を取り消すことができない。」 |
3.「AがBからB所有地の売却の代理権を与えられている場合,Aは,Bの同意がなければ,自ら買主となることができない。」 |
4.「AがBからB所有建物の賃貸の代理権を与えられている場合,Aは,B及び賃借人Dの同意があれば,Dの代理人にもなることができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | ○ |
1.「Aが未成年者である場合、Bは、親権者の同意がないことを理由として、Aが締結した契約を取り消すことができる。」 |
【正解:×】 ◆未成年者の代理人 B (依頼者本人) 代理人は,意思能力さえあればよく,行為能力者でなくてもよいので(102条),制限行為能力者を代理人にすることもできます。(任意代理では,代理権授与のとき,代理人は行為能力者でなくてもよい。法定代理人では,行為能力が要求されることがある。833条,847条,867条など。) したがって,Bは、親権者の同意がないことを理由として、Aが締結した契約を取り消すことができません。 |
2.「AがCにだまされて契約を締結した場合においても,Bは,Cの詐欺を知っていたときは,その契約を取り消すことができない。」(類・平13) |
【正解:○】 ◆代理の瑕疵−相手方の詐欺を本人が知っていた場合 B (本人) 本人はCの詐欺を知っていた。 代理人の意思表示に瑕疵があった場合−心裡留保・虚偽表示・錯誤・詐欺・強迫の存否,特定事情についての善意悪意,過失の有無は,代理人を基準に判断されます。(101条1項) たとえば,代理人が詐欺・強迫を受ければ,本人が詐欺・強迫を受けていなくても,本人は取り消すことができます。 しかし,代理人が特定の法律行為の委託を受け本人の指図に従って行為し,本人がその事情について知っていたり,過失で知らなかった場合には(悪意有過失),代理人が知らなかったことや代理人の無過失等を相手方に主張することができません。(101条2項) したがって,本肢は,BはCの詐欺を知っていたので,BはCに対して詐欺による取消はできません。 |
3.「AがBからB所有地の売却の代理権を与えられている場合,Aは,Bの同意がなければ,自ら買主となることができない。」(類・昭61,平12) |
【正解:○】 ◆自己契約 B(本人) 自己契約や双方代理は,本人の利益が不当に害される恐れがあり,無権代理行為とされ,原則として禁止されています。(任意規定,108条) ただし,以下の場合は,有効な代理行為として,本人に効果が帰属します。
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4.「AがBからB所有建物の賃貸の代理権を与えられている場合,Aは,B及び賃借人Dの同意があれば,Dの代理人にもなることができる。」 |
【正解:○】 ◆双方代理 B D(賃借人) 双方代理となることについて,当事者双方(B,D)の同意を得ているときは,Aは双方の代理人になることができます。 |
●司法書士の登記申請 |
不動産の所有権移転の登記申請について,同一の司法書士が登記権利者と登記義務者の双方の代理をすることが可能なのは,判例では,次のように言ってます。
登記の申請は,既に効力を生じた権利変動の公示を申請する行為であり,民法108条但書の『債務の履行』に当たる。(最高裁・昭和43.3.8) |