Brush Up! 権利の変動篇

代理の過去問アーカイブス 

代理権の消滅・復代理人の選任・顕名 (昭和56年・問3) 


代理に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。(昭和56年・問3)

1.「代理権は代理人の破産手続開始の決定によって消滅する。」

2.「代理人は行為能力者でなければならない。」

3.「委任による代理人は,本人の承諾を得たとき又はやむを得ない理由があるときでなければ,復代理人を選任することができない。」

4.「代理人がその権限内において本人のためにすることを示してなした意思表示は,直接本人に対して効力を生じる。」

【正解】

×

1.「代理権は代理人の破産手続開始の決定によって消滅する。」

【正解:

◆代理権の消滅−代理人の死亡・破産・後見開始の審判

 任意代理,法定代理とも,代理人が死亡・破産・後見開始の審判を受けたときは代理権は消滅します。(111条1項2号)

 ×は,代理権は消滅しない。

 ●代理権の消滅原因
    死亡       破産手続開始の決定       後見開始の審判
 本 人    任意代理 
 法定代理 ×
 ×
 代理人      

2.「代理人は行為能力者でなければならない。」

【正解:×

◆代理権の授権のときには行為能力者でなくてもよい

 代理人は,意思能力さえあればよく制限行為能力者を代理人にすることもできます。(102条)

●注意●

 <代理人は行為能力者であることを要しない(=制限行為能力者でもよい。)>ことと<行為能力者であることを前提に代理権を授与された者が制限行為能力者になったときは代理権が消滅する>ことを混同しないでください。,

3.「委任による代理人は,本人の承諾を得たとき又はやむを得ない理由があるときでなければ,復代理人を選任することができない。」(類・昭55,平12,13)

【正解:

◆復代理人の選任−任意代理人

 委任により代理権を授与された『任意代理人』は,本人の許諾がある場合・やむを得ない事由がある場合を除き原則として,復代理人を選任することはできません

●復代理人の選任
 法定代理人  法定代理人の責任で,自由に選任できる。(106条)
 任意代理人  原則として復任権はないが,以下のときは選任できる。(104条)

・本人の許諾があるとき

・やむを得ない事由があるとき。(急迫の事情があって代理行為が
できない・切迫していて本人に承諾を得る時間がない・本人の
所在が不明など)

4.「代理人がその権限内において本人のためにすることを示してなした意思表示は,直接本人に対して効力を生じる。」(同・昭和58)

【正解:

◆代理行為の要件 : 代理権の授与+顕名 → 本人に効果が帰属

 代理人が行った法律行為の効果を本人に帰属させるには,『本人による代理権の授与』と『代理人が本人の名を示して法律行為をしたこと』が必要です。(99条1項)


代理のトップに戻る

Brush Up! 権利の変動に戻る