Brush Up! 権利の変動篇

代理の過去問アーカイブス 

復代理人の選任・顕名・代理権の消滅・無権代理 (昭和58年・問2) 


代理に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,誤っているものはどれか。(昭和58年・問2)

1.「法定代理人は,やむを得ない理由により復代理人を選任した場合には,その選任及び監督について本人に対して責任を負うに過ぎない。」

2.「第三者が,代理人に対して代理人の権限内において本人のためにすることを示してなした意思表示は,直接,本人に対してその効力を生じる。」

3.「代理権は,本人の死亡,後見開始の審判又は破産手続開始の決定により消滅する。」

4.「他人の代理人として契約をなした者が,その代理権を証明することができず,かつ,本人の追認も得られない場合には,原則として履行又は損害賠償の責に任ずる。」

【正解】

×

1.「法定代理人は,やむを得ない理由により復代理人を選任した場合には,その選任及び監督について本人に対して責任を負うに過ぎない。」

【正解:

復代理人の選任等についての責任−法定代理人

 法定代理人は,いつでもその責任のもとに自由に復代理人を選任でき,原則として,復代理人に過失があるときは法定代理人に過失がなくてもその責任を負うことになっています。しかし,病気などでやむを得ない事由で選任したときは,復代理人の選任・監督についてのみ,責任を負います。(106条)

●復代理人の選任等についての責任
 法定代理人   複代理人に過失があるときは,法定代理人に過失がなくても,本人
 に対して,その責任を負う。ただし,病気などでやむを得ない事由で
 選任したときは,復代理人の選任・監督についてのみ
 責任を負う。(106条)
 任意代理人  以下の場合に,本人に対して責任を持つ。

 ・復代理人の選任・監督に過失があったとき

 ・本人の指名に従って選任した復代理人が不適任・不誠実である
  ことを知っていながら本人に通知せず,またその者を解任しないとき  

(105条)

2.「第三者が,代理人に対して代理人の権限内において本人のためにすることを示してなした意思表示は,直接,本人に対してその効力を生じる。」(同・昭和56)

【正解:

◆代理行為の要件 : 代理権の授与+顕名 → 本人に効果が帰属

 代理人が授与された権限の範囲本人のためにすることを示して行った代理行為の効果は本人に帰属します。(99条)

3.「代理権は,本人の死亡,後見開始の審判又は破産手続開始の決定により消滅する。」

【正解:×

◆代理権の消滅−本人の死亡・破産手続開始の決定・後見開始

 代理権は,本人の死亡(任意代理では本人の破産も)により消滅します。(111条)
本人が後見開始の審判を受けても代理権は消滅しません

 ×は,代理権は消滅しない。

 ●代理権の消滅原因
    死亡       破産手続開始の決定       後見開始の審判
 本 人    任意代理 
 法定代理 ×
 ×
 代理人      

4.「他人の代理人として契約をなした者が,その代理権を証明することができず,かつ,本人の追認も得られない場合には,原則として履行又は損害賠償の責に任ずる。」

【正解:(類・昭和60)

◆無権代理人の責任

 無権代理行為について本人が追認しない場合,相手方,無権代理について善意無過失ならば,無権代理人の責任を追及し,せ債務の履行を請求するか,損害賠償請求をすることができます。(117条1項)

 ただし,相手方が無権代理について悪意または有過失のとき,無権代理人が制限行為能力者のときは上の規定は適用されません。(117条2項)

≪注意≫すでに,無権代理を理由とする取消をしている場合は,相手方は,無権代理人の責任を追及することはできません。


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