Brush Up! 権利の変動篇
代理の過去問アーカイブス
無権代理と表見代理(権限踰越) (昭和60年・問8)
A所有の不動産につき,Aを代理して賃貸借契約を締結する代理権を授与されたBは,この代理権の範囲を超えて,当該不動産をCに売却する契約を締結した。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。なお,Cは善意無過失であるものととする。(昭和60年・問8) |
1.「Bの行為は,無権代理行為であり,当該売買契約は,原則としてAに対してはその効力を生じないが,AがBの行為を追認したときは,その追認のときに新たに有効な契約がAC間で締結されたものとみなされる。」 |
2.「Cは,Aに対し,相当の期間を定めて,その期間内にBの行為を追認するか否かを確答すべきことを催告することができ,当該期間内にAが確答をしなかった場合には,AはBの行為を追認したものとみなされる。」 |
3.「AがBの行為を追認しない場合は,Cは,Bに対し,損害賠償を請求することができるが,売買契約の履行を請求することはできない。」 |
4.「AがBの行為を追認するまでの間は,Cは当該契約を取り消すことができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | × | ○ |
1.「Bの行為は,無権代理行為であり,当該売買契約は,原則としてAに対してはその効力を生じないが,AがBの行為を追認したときは,その追認のときに新たに有効な契約がAC間で締結されたものとみなされる。」 |
【正解:×】 ◆表見代理(権限踰越) A (本人) 1.表見代理の成立
したがって,本肢では,Bの行為はこの表見代理となるので,『原則としてAに対してはその効力を生じない』という記述は×になります。
2.追認の効果
したがって,本肢では,『追認したときは,その追認のときに新たに有効な契約がAC間で締結されたものとみなされる』とあるので,×になります。
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2.「Cは,Aに対し,相当の期間を定めて,その期間内にBの行為を追認するか否かを確答すべきことを催告することができ,当該期間内にAが確答をしなかった場合には,AはBの行為を追認したものとみなされる。」 |
【正解:×】 A (本人) ◆催告に確答なし → “追認拒絶” 無権代理の相手方は,相当の期間を定めて,その期間内に無権代理人の行為を追認するか否かを確答すべきことを催告することができますが,当該期間内に確答がなかったときは,追認拒絶されたものとみなされます。(114条) |
3.「AがBの行為を追認しない場合は,Cは,Bに対し,損害賠償を請求することができるが,売買契約の履行を請求することはできない。」(類・昭和58) |
【正解:×】 ◆無権代理人の責任追及→債務の履行請求 or 損害賠償請求 A (本人) 無権代理行為について本人が追認しない場合,相手方は,無権代理人の責任を追及し,債務の履行を請求するか,損害賠償請求をすることができます。(117条1項) ただし,相手方が無権代理について悪意または有過失のとき,無権代理人が制限行為能力者のときは上の規定は適用されません。(117条2項) したがって,『売買契約の履行を請求することはできない』とする本肢の記述は×になります。 ≪注意≫すでに,無権代理を理由とする取消をしている場合は,無権代理人の責任を追及することはできません。 |
4.「AがBの行為を追認するまでの間は,Cは当該契約を取り消すことができる。」 |
【正解:○】 ◆相手方の無権代理を理由とする取消 A (本人) 無権代理の場合,本人の追認がない間は,相手方は当該契約を取り消すことができます。(115条) この取り消しは,本人・無権代理人のどちらに意思表示しても構いません。 ⇔追認は,本人が相手方にその意思表示をしなければなりません。代理人に対して追認の意思表示をしただけでは,相手方が取消権を行使した場合に追認の効力を対抗できません。(113条2項) |