Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

表見代理の基本問題


【正解】

× × ×

【解答の前提知識】無権代理と表見代理について

は、の代理人として、の所有地を売却した。

表見代理成立するとき → 本人が無権代理人の代理行為の責任を負います。

・表見代理が成立しないとき →無権代理人が自らの代理行為の責任を負います。

 が、から代理権を与えられていないのに、の代理人と偽って売買契約を締結した場合は、原則としてのやった契約の効果は本人に帰属しませんが、

 もし仮に本人と無権代理人との間に何らかの関係があったと客観的に推測される場合には、無権代理行為であっても、相手方が善意無過失ならば,本人の利益を犠牲にして効果を帰属させるということがあります。〔→代理権授与表示による表見代理・権限ゆ越の表見代理・代理権消滅後の表見代理〕

 無権代理行為であることには変わりありませんが、あたかも代理権があったかのように扱おうというのです。〔相手方が善意無過失である場合に限られることに注意。〕

 このように、無権代理人の行為であっても、なお本人に効果が帰属する場合表見代理といいます。(相手方が善意無過失でなければ表見代理は成立しないことに注意。)

 表見代理が成立しても、無権代理であることに変わりはありません。

 したがって、無権代理人の責任(117条)は、この場合にも生じます。(判例)

 オマケ表見代理と無権代理両方が成立する場合、
      相手方はどちらを主張しても構いません

は,の代理人として,の所有地をに売却した。次のそれぞれの記述は,民法の規定及び判例によれば,○か×か。(平成6年・問4)

1.「が未成年者であって,法定代理人の同意を得ないで売買契約を締結した場合, は,に代理権を与えていても,その売買契約を取り消すことができる。」

【正解:×

◆未成年者の代理人

  (本人)
 |
 (無権代理人)(相手方)

 代理行為の効果は、直接その本人に及び(民法第99条1項)、代理人自身に損害を生じるおそれもないため、本人が承知の上で任命すれば制限行為能力者でも代理人になることができます。(第102条)。

 したがって、未成年者Aでも本人Bから代理権を与えられていれば、代理行為である売買契約を有効にすることができ、またその行為のたびにその法定代理人の同意は不要であり、さらに、代理人が制限行為能力者であることを、本人は承知の上で代理人に任命したものであり、それを理由に取消すこともできません

(任意代理では,代理権授与のとき,代理人は行為能力者でなくてもよい。法定代理人では,行為能力が要求されることがある。833条,847条,867条など。)

2.「抵当権設定の代理権しか与えていなかったにもかかわらず,売買契約を締結した場合,は,が善意無過失であっても,その売買契約を取り消すことができる。」

【正解:×

◆権限ゆ越の表見代理

  (本人)
 |
 (表見代理人)(相手方)善意無過失

 抵当権設定の代理権を与えられた者が、目的外の売買契約を締結したとき、代理権の範囲を超えており無権代理行為となり、その契約に効力は生じません(第113条1項)。

 しかし、判例によれば、善意無過失の相手方が、過失なく代理人に売買の権限もあると信ずべき正当な理由があると認められるときは、表見代理が成立し、本人は、無権代理人による法律行為の効果が本人自身に帰属することを拒否できません。

 また、無権代理であることを理由に取り消すことができるのは相手方のであり、本人ではありません。無権代理での本人は、追認か追認拒絶のどちらかをすることができます。

3.「に代理権がないにかかわらずの代理人と偽って売買契約を締結した場合,の追認により契約は有効となるが,その追認はに対して直接行うことを要し,に対して行ったときは,その事実を知ったとしても,契約の効力を生じない。」

【正解:×

◆追認は相手方にするのが原則だが,無権代理人に追認しても相手方が知っているならば,契約の効力が生じる

  (本人)
 |
 (無権代理人)(相手方)

 無権代理行為の本人による追認や拒絶は、無権代理行為の相手方にするのが原則です。

 しかし、本人による追認や拒絶が無権代理人に対してなされたときでも、その相手方がその追認または拒絶の事実を知っているのであればその効力に変わりなく、これをもって対抗することができます(第113条2項)。

4.「に代理権を与えられた後売買契約締結前にについて破産手続開始の決定があると,の代理権は消滅するが,の代理権が消滅しても,が善意無過失であれば,その売買契約は有効である。」

【正解:

◆代理権消滅後の表見代理

  (本人)
 |
 (表見代理人)(相手方)善意無過失

 代理人の破産手続開始が決定すると本人の保護(破産者が代理人では危険)のため代理権は消滅するのが原則です(第111条1項2号)。

 しかし、この場合、過失なき善意の相手方の保護も必要であり、この善意の者に対しては表見代理が成立し、その破産による代理権の消滅をもって、その者に対抗することができず(第112条)、その売買契約は有効となります。

 つまり,本人の代理権授与後に代理人について破産手続開始の決定があったことを相手方が知らなかった本肢の場合は、破産者が代理行為をしても、代理の効果は本人に及ぶものであり、善意無過失の相手方の意思は尊重され、その意思表示どおり有効となります。

<参照条文>〔民法第112条〕

代理権がなくなった後で、代理行為がなされ、しかも相手方がその事実を知らなかった場合には、本人は、その行為の無効を主張することができない。

 ただし、相手方が、過失のために代理権消滅の事実を知らなかったときは、本人は、その行為の無効を主張することができる。


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