Brush Up! 権利の変動篇 過去問のSummary
代理のイントロダクション−問題を解く視点とKEY
代理の問題を解くポイントを整理してみましょう。 |
●代理制度とは何か−他人効
代理とは,代理人という他人が,独立に意思表示をなし,または意思表示を受領することによって,本人が直接にその意思表示の法律効果を取得する制度である。理論的にみれば,行為をなす者とその法律効果の帰属を受ける者とが,普通なら同一人であるのに,代理ではわかれている点に特色がある。−民法1(我妻榮・有泉亨/一粒社,1976) |
行為する者≠法律行為の効果の帰属する者
●代理人による意思表示 | ●代理人による意思表示の受領 |
B (本人) |
B (本人) |
●代理制度の基本−『法律行為の代理』であること
民法での代理は,法律行為の代理に限られる。
→ 法律行為以外(事実行為)の代理は対象外。
※日常の用語としての代理(大半が事実行為)とは異なっていることに注意してください。 事実行為としての代理…例・知人の葬式に父の代理で出席する(意思表示を伴わない) 法律行為としての代理…例・株主総会に株主の代理で出席する(議決権の行使) ※意思表示を伴うものでも,身分行為(婚姻・縁組・認知)の多くには代理は認められない。 |
●代理制度の機能
┌私的自治の拡張 → 主に,任意代理
代理の機能┤
└私的自治の補充 → 主に,法定代理
●代理権の発生−任意代理と法定代理
●代理人 | |
任意代理 | 本人の依頼を受けて代理人になる。〔代理権の授与 ; 授権ともいう〕
民法の条文では,「委任による代理」となっていますが,必ずしも, |
法定代理 | 法律の規定に基づくもの,または,裁判所が選任する。 |
●代理権の発生−(任意代理) 代理権の授与に書面は必要か?
確かに,授権行為〔代理権の授与〕が書面でなされていれば,授権があったこと・代理権の範囲が明確になりますが,単に口頭で代理権授与の意思表示をしたのみでも代理権は発生します。(大審院・大正12.8.2) |
●顕名
代理人が本人のためにすることを示さずに代理行為を行った場合は,無効ではなく,代理人にその効果が帰属します。(110条本文) 例外的に,相手方が,本人のためにするという代理人の真意を知っていた場合〔悪意〕あるいは知ることができた場合〔有過失〕は,本人に効果が帰属します。(110条但書) |
●代理権の範囲−権限の定めのない代理人
代理人は,任意代理で代理権の範囲が明らかでない場合や,法定代理で法律に代理権の範囲が定められていないときは,代理人の管理の対象になっている財産の現状を保存すること(修繕),現状を変更しない範囲で利用・改良することができます。(103条)
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●代理権の消滅
任意代理,法定代理とも,代理人が死亡・破産・後見開始の審判を受けたとき,
本人が死亡したときは,代理権は消滅します。(111条1項2号)
註・×は,代理権は消滅しない。
●代理権の消滅原因 | |||
死亡 | 破産手続開始の決定 | 後見開始の審判 | |
本 人 | ○ | 任意代理 ○ 法定代理 × |
× |
代理人 | ○ | ○ | ○ |
●本人の破産手続開始の決定−委任契約に基づく代理権の消滅 |
本人の破産手続開始の決定は,代理権の消滅原因にはなっていませんが(111条1項1号),委任契約では,委任者(代理での「本人」にあたる)の破産手続開始の決定は委任の終了事由になっています。(653条)
そのため,委任による代理は委任契約の終了によって消滅します。(111条2項) 委任による代理の場合は,本人について破産手続開始の決定→委任契約の終了→代理権の消滅 という流れになります。 ※法定代理人の場合は,本人について破産手続開始の決定があっても,代理権は消滅しない。 |
●自己契約と双方代理
◆自己契約 B(本人) ◆双方代理 B C 自己契約や双方代理は,本人の利益が不当に害される恐れがあり,無権代理行為とされ,原則として禁止されています。(任意規定,108条) ただし,以下の場合は,有効な代理行為として,本人に効果が帰属します。
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●司法書士の登記申請 |
不動産の所有権移転の登記申請について,同一の司法書士が登記権利者と登記義務者の双方の代理をすることが可能なのは,判例では,次のように言ってます。
登記の申請は,既に効力を生じた権利変動の公示を申請する行為であり,民法108条但書の『債務の履行』に当たる。(最高裁・昭和43.3.8) |
●復代理人−復代理人は,「本人の代理人」であることに注意≠代理人の代理人
●復代理人の選任 | |
法定代理人 | 法定代理人の責任で,自由に選任できる。(106条) |
任意代理人 | 原則として復任権はないが,以下のときは選任できる。(104条)
・本人の許諾があるとき ・やむを得ない事由があるとき。(急迫の事情があって代理行為が |
●代理人の責任 | |
法定代理人 | 複代理人に過失があるときは,法定代理人に過失がなくても,本人 に対して,その責任を負う。ただし,病気などでやむを得ない事由で 選任したときは,復代理人の選任・監督についてのみ 責任を負う。(106条) |
任意代理人 | 以下の場合に,本人に対して責任を持つ。
・復代理人の選任・監督に過失があったとき ・本人の指名に従って選任した複代理人が不適任・不誠実である |
●復代理人の代理権の範囲
復代理人は本人の代理人です。復代理人は本人の名で代理行為を行い,その効果は全て本人に帰属します。(107条1項) 復代理人は,代理人同様,本人に対して直接に義務を負います。(107条2項) 復代理人の代理権は,代理人の代理権を基礎に成立しているので,代理人の代理権の範囲をこえる権限をもつことはできません。
▼代理人の代理権または復代理人への授権が消滅すると復代理人の代理権も消滅します。 ▼復代理人が,復代理人への授権で定められた範囲を超えて代理行為をすると,無権代理になります。 |
●参考問題 |
復代理人の権限は,代理人のそれとは無関係であり,代理人の代理権が消滅しても,復代理人の代理権は消滅しない。(司法試験・択一・昭和36年) |
【正解:×】
上で見たように,代理人の代理権が消滅すれば,それに連動して復代理人の代理権も消滅します。 |