Brush Up! 権利の変動編

債務不履行の基礎知識1 遅滞責任の発生時

正解・解説


【正解】

× ×

履行遅滞に基づく債務不履行責任が発生するためには、履行期を徒過したことが必要であるが、この履行期に関する次の記述は民法の規定および判例によれば、○か×か。

1.「確定期限のある債務は、期限が到来したことを債務者が知った時が履行期となる。」

【正解:×

◆確定期限のある債務  

    履行期 (遅滞責任の発生時)  消滅時効の起算点
 確定期限  期限が到来した時  期限が到来した時
 不確定期限  期限が到来し、かつ

 債務者がそのことを知ったとき

 期限が到来した時
 期限の定めなし  原則として、

 履行の請求を受けたとき

 債権が発生した時

2.「不確定期限のある債務は、期限が到来したことを債務者が知った時が履行期となる。」

【正解:

◆不確定期限のある債務 

    履行期 (遅滞責任の発生時)  消滅時効の起算点
 確定期限  期限が到来した時  期限が到来した時
 不確定期限  期限が到来し、かつ

 債務者がそのことを知ったとき

 期限が到来した時
 期限の定めなし  原則として、

 履行の請求を受けたとき

 債権が発生した時

期限の到来した事実が発生した後に、債務者がそのことを知らなくても、債権者が催告したときは、催告の時から履行遅滞になります。(通説)

●参考問題
債務の履行期が不確定期限の場合,債権者の催告がなければ,遅滞とはならない。  
【正解:×

 不確定期限の場合は、債務者が期限の到来を知ったときから遅滞となります。したがって、債権者の催告がなくても、債務者が期限の到来を知った時点で遅滞になります。(民法412条2項)

3.「期限の定めのない債務は、原則として、債務が成立すると同時に履行遅滞となる。」

【正解:×

◆期限の定めのない債務 

    履行期 (遅滞責任の発生時)  消滅時効の起算点
 確定期限  期限が到来した時  期限が到来した時
 不確定期限  期限が到来し、かつ

 債務者がそのことを知ったとき

 期限が到来した時
 期限の定めなし  原則として、

 履行の請求を受けたとき

 債権が発生した時

4.「不法行為に基づく損害賠償義務は、不法行為の成立と同時に履行遅滞となる。」
(類・H4-9-2)

【正解:

◆不法行為の損害賠償の履行遅滞の起点は、不法行為成立時 

 不法行為に基づく損害賠償債務は、判例によれば、被害者救済の観点から、被害者からの催告を待つまでもなく、不法行為による“損害の発生と同時”に、履行の遅滞となります。

<参考>

不法行為による損害賠償請求権は、被害者(または法定代理人)がその事実(損害及び加害者)を

ア.“知ったとき”から「3年後」に時効消滅する。

イ.知らなかった場合でも“不法行為のとき”より「20年経過」で消滅する。(除斥期間)(724条)

    履行期 (遅滞責任の発生時)  消滅時効の起算点
 確定期限  期限が到来した時  期限が到来した時
 不確定期限  期限が到来し、かつ

 債務者がそのことを知ったとき

 期限が到来した時
 期限の定めなし  原則として、

 履行の請求を受けたとき

 債権が発生した時

遅滞責任の発生時と消滅時効の起算点が一致していないのは、制度趣旨が異なるため。

履行期−債務者に履行遅滞の責任を負わせるのはいつから可能か

消滅時効の起算点債権者の債権の行使はいつから可能か


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