Brush Up! 権利の変動編

債務不履行の基礎知識4 損害賠償

正解・解説


【正解】

× ×

債務不履行に基づく損害賠償に関する次の記述は民法の規定および判例によれば、○か×か。

1.「債務不履行による損害賠償請求権は,期限の定めのない債権として成立し,履行

の催告によって履行遅滞を生じる。」

【正解:

◆損害賠償の履行遅滞は催告によって生じる

 債務不履行による損害賠償請求権は,期限の定めのない債権として成立し、履行の催告によって履行遅滞を生じます。(大審院・大正10.5.27)

 不法行為の損害賠償では、不法行為時から履行遅滞になる。(催告は不要)

 いつから遅滞になるか? 消滅時効
債務不履行による
損害賠償
 履行の催告時から  10年
不法行為による
損害賠償
 不法行為時から  知ってから3年

 除斥期間は20年

2.「債務不履行による損害賠償の請求に関して、債権者に過失があった場合でも、

裁判所は損害賠償額について斟酌しないことができる。」

【正解:×

◆過失相殺

 債務不履行による損害賠償では、債務不履行について債権者に過失があるときは、裁判所は、損害賠償の責任の有無や範囲及びその金額を定めるに際して、これを斟酌する。(418条)

 (場合によっては賠償額の軽減だけでなく免責が認められることもあり得る。)

 したがって、債権者の過失を斟酌するのは任意ではないため、本肢は×になります。

不法行為による損害賠償では、被害者の過失を「斟酌することもできる」となっていることに注意。(722条2項)

3.「損害賠償の予定は,契約と同時にする必要はない。」(類・平成2年・問2・肢2)

【正解:

◆損害賠償額の予定は契約と同時でなくてもよい 

 損害賠償額の予定は、これもまた一個の契約であり、契約自由の原則から本体の契約と異なる時に締結しても構いません(但し、損害の発生時点よりも前)

4.「損害賠償の予定をした場合は,履行遅滞を理由に解除することはできない。」

【正解:×

◆損害賠償の予定をしても、履行の請求・解除どちらも選択できる

 損害賠償の予定をした場合でも、相手方が履行遅滞になったとき、履行の請求や解除はどちらも選択できる。

5.「損害賠償額の予定をした場合,債権者は,実際の損害額が予定額より大きい

ことを証明しても,予定額を超えて請求することはできない。」(類・平成2年・問2・肢4)

【正解:

◆損害賠償の予定額の増減 

 損害賠償の予定額を当事者間で定めていた場合は、債権者は債務不履行の事実さえ証明できれば賠償予定額を請求できます。(実損額の証明は必要ではない。)

 この場合、実際の損害額が予定額より大きいことを証明しても、超過額を請求することはできず、原則として、裁判所は賠償予定額を増減することはできません(420条1項)

損害賠償の予定額が公序良俗に反している場合は、裁判所は、公序良俗に反している限度で、全部無効または一部無効として賠償額の減額をすることができます。
(出題:平成14年・問7・肢3) 

債務不履行による損害賠償発生の要件

→損害が債務不履行によって生じたものであることを要する

→債務不履行があっても損害を生じないときは損害賠償を請求できない。

・債務不履行の事実

・債務者に帰責事由があること

・損害の発生 →解除の要件にはなっていないことに注意

・因果関係(損害の発生と債務不履行との間に)


債務不履行のトップに戻る

Brush Up! 権利の変動に戻る