Brush Up! 権利の変動編

債務不履行 履行遅滞と損害賠償の問題1

正解・解説


【正解】

× × ×

Aは,Bに対して金銭債権を有している。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。(昭和60年・問2)

1.「Bの履行について確定期限があるときであっても,Bは,Aから履行の請求を

受けるまで履行遅滞とはならない。」

【正解:×

◆確定期限のある債務 412条2項 

 確定期限のある債務では、原則として、その期限が到来したときから履行遅滞の責任が生じます。このため、「Aから履行の請求を受けるまで履行遅滞とはならない」 といっているので×になります。

    履行期 (遅滞責任の発生時)  消滅時効の起算点
 確定期限  期限が到来した時  期限が到来した時
 不確定期限  期限が到来し、かつ

 債務者がそのことを知ったとき

 期限が到来した時
 期限の定めなし  原則として、

 履行の請求を受けたとき

 債権が成立した時

2.「Bが債務を履行しない場合,Aは,損害賠償を請求することができるが,その場合,

Aは,損害の証明をしなければならない。」(類・平成2-2-1)

【正解:×

◆金銭債務の債務不履行では、損害を証明しなくても損害賠償請求ができる 

 金銭債務の履行遅滞の場合は、履行が遅れたことによって被った損害の賠償請求ができます。(遅延賠償、412条、415条)

 金銭の引渡債務の債務不履行での損害賠償請求には、特則があります。

債務者の帰責事由の立証は不要

 ← 金銭債務では不可抗力を抗弁とすることはできない(419条2項後段)
    債務者は不可抗力によって遅滞したことを立証しても遅滞責任を免れない。

 ← 金銭債務の債務不履行では、履行不能はなく、履行遅滞。

・債務不履行(履行遅滞)を立証すれば、損害を証明する必要はない(419条2項前段)

・損害賠償額は特約があればそれに従い、特約がなければ、年率5%の法定利息に従って計算した金額になる。また、約定利息が法定利息を超えるときは原則として約定利息に従う。(419条1項)

 損害を証明する必要はないので、本肢は×になります。

3.「AがBの債務不履行を理由として損害賠償を請求してきた場合,Bは,不可抗力

をもって抗弁することはできない。」

【正解:

◆金銭債務では不可抗力をもって抗弁できない 

 金銭債務の不履行については、債務者は不可抗力であることを証明しても債務不履行の責任を免れず、抗弁できない。(419条2項後段)

4.「A及びBが,Bの債務不履行について損害賠償の額を予定していた場合であって

も,裁判所はその額を増額することができる。」

【正解:×

◆損害賠償の予定額の増減 

 損害賠償の予定額を当事者間で定めていた場合は、債権者は債務不履行の事実さえ証明できれば賠償予定額を請求できます。

 この場合、原則として、裁判所は賠償予定額を増減することはできません(420条1項)

●過去問の出題事例

 実際の損害額が損害賠償額の予定額(違約金)よりも大きいとを債権者が立証しても、損害賠償の予定額(違約金)の増額請求は認められない。
(出題:平成2年・問2・肢4)

 実際の損害額が損害賠償額の予定額(違約金)りも少ないことを債務者立証しても、損害賠償の予定額(違約金)の減額請求は認められない。
(出題:平成6年・問9・肢4)

損害賠償の予定額が公序良俗に反している場合は、裁判所は、公序良俗に反している限度で、全部無効または一部無効として賠償額の減額をすることができます。
(出題:平成14年・問7・肢3)

●参考問題
損害賠償の予定をしていた場合には,債権者は,実際の損害額が予定額より大きいことを証明しても,予定額を超えて請求することはできない。(司法試験・昭和49年・問44)
【正解:

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