Brush Up! 権利の変動編

債務不履行 履行遅滞と解除1

正解・解説


【正解】

× × ×

●解除の位置付け
 【解除という言葉で表現されるテリトリー】

               ┌ 法定解除〔債務不履行による解除など〕
    ┌(いわゆる)解除
 解除┤         └ 約定解除〔事前に当事者の合意によって定める〕
    └合意解除〔事後に当事者の合意によって定める〕

 ※約定解除…法定解除のルールの修正。
  「一定の場合には解除権が発生すること」〔解除権留保,解除条件をつける〕
  「催告を不要にする合意」〔無催告解除〕
  「手付による解除」も広い意味では,この約定解除に含められる。

債務不履行による契約解除に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば、適切なものはどれか。(宅建実務講習・演習問題から)

1.「売主の債務不履行により解除された場合,売買契約は白紙になるので,買主が

売主に損害賠償を請求することはできない。」

【正解:×

◆解除+損害賠償請求 

 債務不履行により売買契約が解除された場合は、その効果として、債務者は損害賠償義務を負い、債権者は損害賠償の請求ができます。(民法545条3項)

 解除の遡及効によって、債権債務関係は消滅し契約は始めから存在しなかったのと同じことになりますが、完全に消滅するのではなく制限を受けています。(もし、完全に消滅しているのならば、解除による損害賠償請求も存在しないことになってしまいます。)

 債権者を保護するため、解除の遡及効には制限が加えられ、債務不履行による損害賠償請求権は解除した後も存続します。

●解除の効果−一方の当事者を相手方の債務不履行などから救済
契約による法的な拘束から解放させる

 (解除の意思表示をする者は、自分自身の反対債務から解放される。)

原状回復

損害賠償

2.「履行遅滞を理由として売買契約を解除する場合,債務者に履行する意思の

ないことが明白なときには,催告しなくても契約を解除することができる。」

【正解:×

◆債務者に履行する意思がないことが明白でも催告は必要

 判例では、「あらかじめ履行の催告をしなくても解除できる」という特約がなく、債務者に履行をなす意思がないことが明白である場合でも、履行の催告をした後でなければ、解除できないとしています。(大審院・大正11.11.25)

 判例ではその理由として、履行の催告をすることによって、債務者が考え直して履行の催告に応じることもありえるから、としています。

判例によって、「履行の催告を要しないで直ちに契約を解除することができる」という当事者の合意をあらかじめしておくことも有効とされています。

●履行遅滞での解除権の発生

相当の期間を定めてその履行を催告し、その相当期間内に履行されなかったときに解除権が発生する。(541条)

 解除の要件は、細かく見ると以下のものですが、大雑把な把握にとどめて下さい。

1)債務者の責めに帰すべき事由による履行遅滞であること。

・履行期に履行が可能。→原始的不能との区別
・履行期を徒過すること。
・債務者の責めに帰すべき事由に基づくこと。→危険負担の債権者主義との区別
・履行しないことが違法であること。

 双方とも履行していない場合相手方が同時履行の抗弁権を有する場合には、一方の当事者は自分の債務の履行を提供しておかなければ解除をすることができない。

2)催告期間内に履行されなかったこと。

履行の催告は、一定の期間を明示していなくても有効とされています。(大審院・昭和2.2.2)

3.「履行遅滞を理由として売買契約を解除する場合,相当の期間を定めて催告を

すれば,その相当の期間が経過することにより,当然に売買契約の効力は失われ

るので,あらためて解除の意思表示をする必要がない。」

【正解:×

◆催告して相当期間が経過した後、あらためて解除の意思表示が必要

 「履行の催告+解除の意思表示」はワンセット。

相当の期間を定めて履行を催告した際、あわせて『催告期間内に履行がないときは、改めて解除の意思表示をしなくても、契約を解除する』との意思表示をしておくこともできます。(出題:平成5年・問7・肢4)

●履行の催告について
・催告で示した期間が相当でなくても、また、期間を指定しないで催告をしたとしても、履行の催告の後、相当な期間が経過すれば解除権は発生する。(判例)(出題:平成5年・問7・肢2)

4.「売主が買主の履行遅滞を理由として売買契約を解除する場合,買主が期日に

支払いをしないことが明白であっても,売主が期日に引渡し等の履行を怠っていれば,

相当期間を定めた催告をしても契約の解除をすることができない。」
(類:H4-8-2,H8-9-3,H10-8-1,H11-8-1)

【正解:

◆債務不履行による解除では、債務の本旨に従った履行の提供が必要。

 →履行の提供をして、相手方の同時履行の抗弁権を失わせておく必要がある。

 履行遅滞による解除権の発生には、債務者の責めに帰すべき事由による履行遅滞であることが要件とされており、債務者が履行しないことが違法であることが必要です。

 売主(債権者が期日に引渡し等の履行を怠っていれば、買主に(債務者)は同時履行の抗弁権がある以上、履買主が支払いをしない(行しないこ)とが違法とはいえません。さ

 したがって、売主が期日に引渡し等の履行を怠っていれば、買主に対して、相当期間を定めた催告をしても契約の解除をすることはできません。

売主履行の提供をしないで買主に代金支払いの催告をしても、買主同時履行の抗弁権があり、買主が履行遅滞に陥っていない場合は、売主は契約を解除することはできない(最高裁・昭和51.12.2)

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