Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

遺言に関する問題1


【正解】

×

遺言に関する次のそれぞれの記述は,民法の規定によれば○か,×か。(平成4年・問13)

1.「遺言は,満15歳に達すればすることができ,法定代理人の同意は必要でない。」

【正解:

 遺言とは、ある人の最後の意思表示であるため、その意思を最大限尊重して実現させるというのが遺言制度の目的でもあり、「未成年者の財産に関する意思表示は、法定代理人の同意がなければ取消すことができる(民法第4条)」という大原則の例外として、遺言の場合は、“行為能力”までは要求されていません。

 人は15歳にもなれば“意思能力”はあると認められ、また遺言をするという行為は代理人による行為にもナジまないため、未成年者であっても、満15歳になれば、“単独で” 有効な遺言をすることができます(第961条)。

●参考問題
1.「遺言は,15才未満の者がした場合であっても,撤回されるまでは有効である。」(司法書士・平成8年・問20・肢ア)
【正解:×

 15才未満の者がした遺言は、「撤回することができる」のではなく無効、。

2.「遺産の全部を相続人の一人に贈与する旨の遺言があっても,被相続人の兄弟姉妹

遺留分の保全に必要な限度で,遺贈の減殺を請求することができる。」

【正解:×

 設問1の解説のように、遺言者の意思は最大限尊重されるのが原則ですが、遺言者の、配偶者と子(死亡のとき孫、「卑属」という)の場合は、それぞれ相続分の“1/2”、親(死亡の場合は祖父母、「尊属」という)の場合は相続分“1/3”、など「配偶者及び直系(タテのつながり)の親族」については、その被相続人の意思(遺言)は、減殺されて遺留分として認められています。

 しかし、遺言者の“兄弟姉妹など傍系(ヨコのつながり)の親族”については、たとえ法定相続人の場合であっても、遺留分は認められていません(第1028条)。

3.「遺産の全部を相続人の一人に贈与する旨の遺言があっても,遺言者が死亡する前に

受遺者が死亡したときは,その遺贈は効力を生じない。」

【正解:

 遺贈とは、受遺者(特定人)に対する贈与であって、遺言者の死亡前にその特定人が死亡したとき、その死亡した特定人の相続人に遺贈を代襲させることは、遺言者の本意と異なると考えられ、遺言書に「遺贈は代襲も可」など特段の事情がない限り、その遺贈の効力は生じません(第994条1項)。

 受遺者の死亡  遺言者の死亡  

 ――――――――――――→

 遺贈がなされていても,遺言者の死亡の前に,受遺者が死亡してしまったときは,遺言は効力を失う。

4.「遺言者が遺贈をしても,受遺者が遺贈の放棄をしたときは,遺言に別段の意思表示が

ない限り,受遺者が受けるべきであったものは,相続人に帰属する。」

【正解:

 遺贈が放棄されたとき、その効力は遺言者の死亡の時に遡って生じ(第986条2項)、その受遺者(放棄者)は“はじめから相続人ではなかった”ものとみなされ(第939条)、その結果、代襲相続されることもなく、その放棄分は本来の相続人に帰属します。


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