Brush Up! 権利の変動篇

委任の過去問アーカイブス 昭和43年 準委任・民事仲立


は,に土地売買の媒介を頼んだ。この場合のの権限について次の記述のうち,正しいものはどれか。(昭和43年,1968)

1.「は,を代理して買主と売買契約を締結する権限はあるが,代金を受領する権限はない。」

2.「は,を代理して買主と売買契約を締結する権限はないが,代金を受領する権限はある。」

3.「は,を代理して買主と売買契約を締結する権限も,代金を受領する権限もない。」

4.「は,を代理して買主と売買契約を締結する権限も,代金を受領する権限もある。」

【正解】

× × ×

【正解:

◆宅建業者の媒介は準委任契約 

 不動産取引の媒介は,民事仲立とされますが,民法では民事仲立について特に規定があるわけではありません。〔「民事仲立」は商取引以外を仲立する。商取引の仲立をするのは「商事仲立(商法543条)

 媒介契約〔仲介契約〕とは,売買契約等において,当事者の取引条件を調整して意思が合致するように努力する行為〔事実行為〕です。〔単なる物件情報の提供とは異なる。〕

 一般に,不動産の取引の媒介契約は準委任契約と考えられています。

 委任は,当事者の一方が法律行為をなすことを相手方に委託し,相手方がこれを承諾することによって効力が発生します。〔諾成契約(民法643条)

 これに対して,準委任は,「法律行為ではない事務の委託」(民法656条)であり,ここに大きな違いがあります。(しかし,法的な性格はともかく,準委任では委任の規定が準用される。656条)

宅建業者の代理と媒介の違い

 代理  民法での委任  法律行為の事務の委託
 媒介  民法での準委任  法律行為ではない事務の委託

 本問題での「売買契約を締結する」,「代金を受領する」,どちらも法律行為ですから,法律行為の委託である委任契約ならば受任者に授権されることがあります。しかし,事実行為の委託である準委任の場合にはこのような権限は与えられません

 したがって,肢3が正しいということになります。

宅建業者の媒介契約については以下をご参照ください。

 山野目 章夫 『不動産媒介契約の考え方』 (全日・紀尾井町フォーラム)

民事仲立人は,委託のない相手方に対して報酬請求はできない。(最高裁・昭和44.6.26)。


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