Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
委任の基本問題4 準委任
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | ○ |
管理を業としないCに賃料取立て等の代理権を与えるのは,法律行為ではない事務の委託とみることができます。このため,民法上は『準委任』契約となり,委任の規定が準用されます。(民法656条) |
Aは,Bにマンションの一室を賃貸するに当たり,管理を業としないCとの間で管理委託契約を締結して,Cに賃料取立て等の代理権を与えた。この場合,民法の規定によれば,次のそれぞれの記述は、○か、×か。(平成7年・問9) |
1.「Cは,Aとの間で特約がなくても,Aに対して報酬の請求をすることができる。」(昭和61)
【正解:×】 ◆委任は特約がなければ、原則として、無償契約 委任は原則として無償契約です。当事者間の特約で報酬の定めがない限り、受任者は委任者に対し報酬を請求することはできません。(民法648条1項) |
2.「Aは,CがBから取り立てた賃料を自己の生活費に消費したときは,Cに対して,
その賃料額に,消費した日以降の利息を付した金額を支払うよう請求することができる。」
【正解:○】 ◆受任者の金銭消費の責任 受任者は、委任事務を処理するにあたって受け取った金銭その他、収取した果実 (天然果実・法定果実) を委任者に引き渡さなければいけません。(民法646条1項) 受任者が委任者のために自己の名をもって取得した権利も、委任者に移転しなければなりません。(民法646条2項) このように、受任者には、委任者のために金銭やその他のものを受け取った場合は、委任者に引き渡すか、銀行などへ預金してその利殖を図ること (647条:「その利益のために用いるべき金額」) が善良なる管理者の注意として要求されています。 もし、受任者が委任者に引き渡すべき金額や委任者の利益のために用いるべき金額を自己のために費消した場合は、委任者は、 ・受任者の故意・過失の有無を問わず、 ・また損害の証明を要しないで、 消費した日以降の利息や損害賠償を受任者に請求することができます。(民法647条) したがって、本設問の場合、CはBから取り立てた賃料を自己の生活費に消費しており、Aは、その賃料額に、消費した日以降の利息を付した金額を支払うよう請求することができます。 |
3.「Aが死亡したとき,委託契約は終了するが,急迫の事情がある場合においては,
Cは,その管理業務を行う必要がある。」【関連:昭和55,59,63,平成9,13】
【正解:○】 ◆委任契約終了後の応急処分義務 委任契約は、委任者と受任者の信頼関係に基づいてなされる契約であることから、委任者または受任者が死亡すれば、終了します。(民法653条) しかし、本設問のように委任者が死亡して委任契約が終了したのだから委任事務をする必要がないという理由で、受任者が委任事務を中断してしまうと、委任者側に不測の損害を与えることにもなりかねません。 民法は、このような場合を想定して、委任終了の際に急迫の事情があるときには、受任者は、委任者の相続人が処理できるようになるまで必要な応急措置をとるように定めています。(民法654条) したがって、Cは、Aが死亡し急迫の事情がある場合はその管理業務を行う必要があり、○になります。 ▼委任による登記申請の代理権は,本人(委任者)の死亡によっても消滅しません。本人が死亡したときに遺族が登記申請に協力してくれないなどのトラブルを避けるためです。(不動産登記法・第17条1号)←平成14年・問15出題 |
4.「Cは,地震のため重傷を負った場合,Aの承諾を得ることなく,Dに委託して
賃料の取立てをさせることができる。」
【正解:○】 ◆複委任 委任契約は、委任者と受任者の信頼関係に基づいてなされる契約であることから、原則として、受任者は、善管注意をもって、自ら委託された事務を処理する義務があると考えられています。〔単純な補助者として使う場合はかまいません。〕(通説) しかし、受任者が委託事務を処理できないとき、民法では明文の規定はありませんが、通説では、 ・委任者の承諾を得ている場合 ・やむを得ない事由がある場合 は、例外的に、ほかの人に復委任できると考えられています。(104条、105条の復代理人の規定の類推適用 ) 本設問では、Cは、地震のため重傷を負っており、Aの承諾を得ることなくDに委託したのは、上の「やむを得ない事由がある場合」にあたると考えられます。
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