Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
委任の基本問題5 平成9年・問9
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | ○ |
管理を業としないCに、第三者の立入り防止等の土地の管理を委託するのは、法律行為ではない事務の委託とみることができます。このため、民法上は『準委任』契約となり、委任の規定が準用されます。(民法656条) |
Aは、その所有する土地について、第三者の立入り防止等の土地の管理を、当該管理を業としていないBに対して委託した。この場合、民法の規定によれば、次のそれぞれの記述は、○か、×か。(平成9年・問9) |
1.「Bが無償で本件管理を受託している場合は、『善良なる管理者の注意』ではなく、
『自己の財産におけるのと同一の注意』をもって事務を処理すれば足りる。」
(昭和59,63,平成9,14)
【正解:×】 ◆善管注意義務違反 受任者は、有償・無償契約を問わず、善良なる管理者の注意をもって委任事務を処理する義務を負っています。(民法644条) この義務違反により損害が生じた場合、委任者は、受任者に損害賠償を請求できます。 ▼有償・無償で区別するのは『寄託』です。
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●善管注意義務 |
受任者は、委任の本旨に従って、善良なる管理者の注意をもって委任事務を 処理する義務を負う。(644条) → この規定は、後見監督人(852条)、後見人(869条)、遺言執行者(1012条2項) |
●参考問題 |
次のうち、目的物の保管義務について、自己の財産におけるのと同一の注意をもって保管すれば足りる者はどれか。
1.無報酬で寄託を受けた者 2.使用貸借の借主 3.留置権者 4.引渡し前の特定物の売主 (昭和61年・問2) |
【正解:1】 カルト問題に近いけれども、出題されています。
自己の財産におけるのと同一の注意をもって保管・・・・無報酬で寄託を受けた者(659) 引渡しをするまで、善良なる管理者の注意をもって保存(400) ・・・使用貸借の借主 引渡し前の特定物の売主 善良なる管理者の注意をもって占有する義務・・・留置権者(298)、質権者(350) 善良なる管理者の注意をもって委任事務を処理・・・委任、準委任 本人の意思及び利益に適合した方法で管理・・・事務管理 (697通説は善管注意義務) |
2.「Bが無償で本件管理を受託している場合は、Bだけでなく、Aも、いつでも本件
管理委託契約を解除することができる。」(昭和59,63,平成9,14)
【正解:○】 ◆各当事者の解除権 委任契約は、解除権放棄の特約がなければ、当事者のどちらからでも、またいつでも、何ら特別の理由がなくても、解約できます。(民法651条) しかし、当事者の一方が相手方にとって不利な時期に委任契約を解除したときは、原則としてその損害を賠償しなければなりません。(651条2項) ▼相手に不利な時期の解除権の行使には、原則として損害賠償することが必要ですが、やむを得ない事由があるときには損害賠償する必要はないとされています。 |
3.「Bが有償で本件管理を受託している場合で、Bの責めに帰すべからざる理由に
より本件管理委託契約が履行の中途で終了したときは、Bは、既にした履行の割合
に応じて報酬を請求することができる。」
【正解:○】 ◆履行半途で終了した場合の報酬請求権 委任契約では、有償で受託している場合は、原則として報酬は後払いになっています。 有償の委任契約が、受任者の責めに帰すべからざる理由によって履行の中途で終了した場合には、受任者はすでになした履行の割合に応じて報酬を請求することができます。 (民法648条3項) |
4.「Bが有償で本件管理を受託している場合で、Bが死亡したときは、本件管理委託
契約は終了し、Bの相続人は、当該契約の受託者たる地位を承継しない。」
(昭和55,59,63,平成9,13) 【関連:平成7年】
【正解:○】 ◆委任契約の終了 特約がなければ、受任者の死亡により委任契約は終了し、相続人は、当該契約の受託者たる地位を承継しません。(民法653条)
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