Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

委任の基本問題6


【正解】

× × ×

が,所有の不動産の売買をに対して委任する場合に関する次の記述は,民法の規定によれば,○か、×か。なお,及びは宅地建物取引業者ではないものとする。(平成14年・問10)

1.「不動産のような高価な財産の売買を委任する場合には,に対して委任状を

交付しないと,委任契約は成立しない。」

【正解:×

◆委任契約の成立 

 委任は、当事者の一方が法律行為をなすことを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって効力が発生します。〔諾成契約(民法643条)

 委任契約は、諾成契約であり、不要式の契約なので、委任状の交付がなくても成立します。(民法643条)

委任契約は、原則として、無償・片務契約とされます。有償契約の場合は、有償・双務契約になります。

委任契約で、受任者に対して代理権を授与することがありますが、そうでない場合もあり、代理と委任は、法律上の構成としては明確に区別されています。したがって、「受任者は、委任者の代理人である」とは限りません。

2.「は,委任契約をする際、有償の合意をしない限り,報酬の請求をすることが

できないが,委任事務のために使った費用とその利息は,に請求することが

できる。」(昭和61)

【正解:

◆無償契約でも、委任事務の費用は請求できる 

 委任契約は、原則として無償契約であり、特約がなければ、報酬を請求することはできません。(民法648条1項)

 しかし、委任事務のために使った費用とその利息は、無償契約でも請求することができます。(民法650条1項)

3.「が当該物件の価格の調査など善良なる管理者の注意義務を怠ったため,

不動産売買についてに損害が生じたとしても,報酬の合意をしていない以上,

に対して賠償の請求をすることができない。」(昭和59,63,平成9)

【正解:×

◆善管注意義務違反による損害賠償

 受任者は、有償・無償契約を問わず善良なる管理者の注意をもって委任義務を処理する義務を負っています。(民法644条)

 この義務違反により損害が生じた場合、委任者は、受任者に損害賠償を請求できます

4.「委任はいつでも解除することができるから,有償の合意があり,売買契約成立

寸前にが理由なく解除してに不利益を与えたときでも,に対して損害賠償

を請求することはできない。」(関連:昭和59,63,平成9)

【正解:×

◆各当事者の解除権と損害賠償 

 委任契約は、解除権放棄の特約がなければ、当事者のどちらからでも、またいつでも何ら特別の理由がなくても、解約できます。(民法651条)

 しかし、当事者の一方が相手方にとって不利な時期に委任契約を解除したときは、原則としてその損害を賠償しなければなりません。(651条2項本文)

相手に不利な時期の解除権の行使には、原則として損害賠償することが必要ですが、やむを得ない事由があるときには損害賠償する必要はないとされています。(651条2項但書)


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