Brush Up! 権利の変動篇
消滅時効の基本の過去問アーカイブス 昭和55年・問3
消滅時効は,権利を行使することを得る時から進行するが,AがBに土地を売った場合の代金請求権の消滅時効について,次の記述のうち,誤っているものはどれか。(昭和55年・問3) |
1.「代金支払期日を定めたときは,Aの代金支払請求権の消滅時効は,その期日から進行する。」 |
2.「工事中の地下鉄が完成したら代金を支払うこととした場合,Aが地下鉄の完成を知った日から,Aの代金請求権の消滅時効は進行する。」 |
3.「Aが長期入院した場合でも,それにもかかわらずAの代金請求権の消滅時効は進行する。」 |
4.「Aの代金請求権について消滅時効の中断があった場合は,中断の事由が終了した時から更に消滅時効の進行が始まる。」 |
●消滅時効 | |
債権 | 原則として10年(167条1項) |
短期消滅時効 | 5年,3年,2年,1年(168条〜174条)
→確定判決等で確定したときは10年となる。(174条の2) |
債権でも所有権でも ない財産権 |
20年(167条2項)
用益物権 (地上権・地役権・永小作権) 抵当権〔抵当不動産の第三取得者や後順位抵当権者との |
※所有権は消滅時効にかからない。
●消滅時効にかからないもの |
所有権 ; 留置権,占有権,先取特権,相隣関係,共有物分割請求, |
質権,抵当権
※抵当権は,債務者及び抵当権設定者(物上保証人を含む)は抵当権の時効消滅を主張できない。(396条) |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
1.「代金支払期日を定めたときは,Aの代金支払請求権の消滅時効は,その期日から進行する。」 |
【正解:○】 ◆消滅時効の起算点−確定期限 消滅時効は、権利行使できるようになったときから進行を開始します。(166条1項) 「権利行使することができる時」というのは『債権の履行期が来ていない等の法律上,権利を行使することに支障がなくなったとき』のことです。 代金支払期日(確定期限)を定めたときは,Aの代金支払請求権の消滅時効は,その期日から進行します。
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●ドリル |
次の記述のうち,誤っているものはどれか。
1.確定期限のある債権の消滅時効は,期限到来の時から進行する。 2.不確定期限付債権の消滅時効は,債権者が期限到来を知らなくても,期限到来の時から進行する。 3.期限の定めのない債権の消滅時効は,債権者が催告した時から進行する。 4.停止条件付債権の消滅時効は,条件成就の時から進行する。 |
【正解:3】 期限の定めのない債権の消滅時効の起算点は債権が成立したとき。
なお、確定期限,不確定期限とも消滅時効の起算点は期限が到来したとき。 |
2.「工事中の地下鉄が完成したら代金を支払うこととした場合,Aが地下鉄の完成を知った日から,Aの代金請求権の消滅時効は進行する。」 |
【正解:×】 ◆消滅時効の起算点−不確定期限 「工事中の地下鉄が完成したらBは代金を支払う」というのは、不確定期限が付されている債権です。不確定期限の債権は、期限が到来したことを債権者が知らなくても、その期限が到来したときから進行をはじめます。 したがって、本肢では「Aが地下鉄の完成を知ったとき日から」となっているので×になります。 |
3.「Aが長期入院した場合でも,それにもかかわらずAの代金請求権の消滅時効は進行する。」 |
【正解:○】 ◆債権者の長期入院? ノイズの問題。Aが長期入院した場合でも,Aの代金請求権の消滅時効の中断事由にはならない。このため、「Aの代金請求権の消滅時効は進行する。」とした本肢は正しい。 |
4.「Aの代金請求権について消滅時効の中断があった場合は,中断の事由が終了した時から更に消滅時効の進行が始まる。」 |
【正解:○】 ◆時効中断後の消滅時効 時効中断があるとそれまで進行していた期間はゼロ・カウントにリセットされます。 消滅時効の中断があった場合は,原則として、中断の事由が終了した時から更に消滅時効の進行が始まります。(157条1項) |