Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

隔地者間の契約の成立に関する問題 2


【正解】

×

隔地者間の契約の申込、承諾、成立に関し、誤っているものはどれか。(昭和50年)

1.「申込に対する承諾の通知により契約が成立するのは、承諾の通知を申込者に

発したる時である。」(出題:昭和50,57)

【正解:

◆契約成立での発信主義

  隔地者間の契約は、申込みに対して承諾の通知を発したときに成立します。(民法526条)

民法では、意思表示の効力の発生時期は到達主義が原則ですが、契約の成立では、例外的に発信主義にしました。

2.「承諾をなすべき期間を定めて申込をなした者は、当該期間中であっても、申込を

取り消すことができる。」(出題:昭和44,50)

【正解:×

◆承諾期間内の「申込の取り消し」はできない

 承諾期間を定めた申込は、その申込が相手方に到達すると承諾期間内は申込を取り消すことはできません(民法521条1項)

 申込みがあれば、相手方は承諾の通知を出すとともに契約内容によっては契約の準備を開始することがあります。もし自由に申込みの取り消しができるとしたら、その取り消しの前に契約の準備をしていた相手方は原料の発注や仕入れなどで、巨大な損害を被ることもあります。このようなことを防ぎ、申込みの相手方の保護を図るための規定です。

 申込を取り消そうと思っていても、承諾期間内に承諾が到達すれば契約は成立します。

申込みの取り消しができない期間
(申込みが相手方に到達する前は、その申込みを取り消すことはできます)
承諾期間の定めのある申込み 承諾の期間内は取り消すことはできない。(民法521条1項)
承諾期間の定めのない申込み 承諾の通知を受けるのに要する相当な期間は取り消すことができない。(民法524条)

●承諾期間の定めのある申込みの効力

 申込           承諾期間が経過        

 ――――――――――――――――――――

  申込の撤回不可    込の効力は消滅(承諾適格なし)

                 承諾不可

                 →遅れて届いた承諾は新たな申込とみなすことができる

●承諾期間の定めのない申込みの効力(通説)

              承諾の通知を受けるのに    申込を取消できるときから

 申込          相当な期間が経過        相当期間が経過

 ――――――――――――――――――――――――――――――――

  申込の撤回不可    申込の撤回可能         申込の効力は消滅

                                     承諾不可    

3.「申込者の定めた承諾の期間を経過した後に承諾が行われたときは、その承諾を

新たな申込となすことができる。」(出題:昭和50,58)

【正解:

 申込者が承諾期間を定めて申込をした場合は、その期間内に承諾が到達しなければ、原則として、その申込は効力を失います。(民法521条2項)

 承諾期間を経過した後に承諾が到達した場合、申込者はこの遅れて来た承諾を新たな申込があったものとみなすことができます。(民法523条)

延着した承諾は、新たな申込があったものとみなし、これについてさらに承諾を行えば契約は成立します。

承諾期間を過ぎて到着した承諾も全くその効力がないとは言い切れません。

 通常ならばその承諾が承諾期間内に到着することが見込まれる時期に発信していたことを申込者が知り得るときは、

 申込者は遅滞なく相手方に対してその延着の通知をしないと、その承諾は延着しなかったものとみなされ、承諾期間内に到着したのと同じ扱いになり、契約は成立します。

承諾期間を過ぎて到着した承諾への対処

【原則】承諾期間を過ぎて到着した承諾 → 契約は成立していないが、その承諾を
                           新たな申込とみなすことができる。

【例外】 通常ならばその承諾が承諾期間内に到着することが見込まれる時期に発信していたことを申込者が知ることができたとき

 承諾が到着した後に延着したことを通知すれば、契約は成立しない。
 (延着の通知をしなければ、契約は成立する。)

 承諾の通知が到着する前遅延の通知を発信すれば、契約は成立しない。

4.「承諾者が申込に条件を附しその他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込

の拒絶と共に新たな申込をなしたものとみなされる。」(出題:昭和50,57)

【正解:

 契約交渉の上では、申込に対して修正や変更を加えることが起こります。

 民法では、取引を円滑化するため、承諾者が申込に価格面の条件を付けるなどして申込みに変更を加えてこれを承諾したときは、その申込を拒絶した上で新たな申込をしたものとみなされます。(民法528条)

承諾の内容は、申込の内容と一致していなければ効力を持たないのでこのような規定になっています。


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