Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
隔地者間の契約の成立に関する問題 3
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
○ | × | ○ | ○ |
契約に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。(昭和58年) |
1.「承諾期間を定めて契約の申込みをした場合、遅延した承諾は申込者において
新たな申込みとみなすことができる。」(出題:昭和50,58)
【正解:○】 申込者が承諾期間を定めて申込をした場合は、その期間内に承諾が到達しなければ、原則として、その申込は効力を失います。(民法521条2項) 承諾期間を経過した後に承諾が到達した場合、申込者はこの遅れて来た承諾を新たな申込があったものとみなすことができます。(民法523条) ▼延着した承諾は、新たな申込があったものとみなし、これについてさらに承諾を行えば契約は成立します。 ●承諾期間の定めのある申込みの効力 申込 承諾期間が経過 ●――――――――●―――――――――――― 申込の撤回不可 申込の効力は消滅(承諾適格なし) 承諾不可 →遅れて届いた承諾は新たな申込とみなすことができる |
2.「他人の強迫により締結した契約は取り消すことができるが、善意の第三者には
取り消しをもって対抗することはできない。」(頻出問題)
【正解:×】 ◆強迫による意思表示の取り消しは、善意の第三者に対抗できる 詐欺又は強迫による意思表示は取り消すことができ、 ・詐欺による意思表示の取り消しは、善意の第三者に対抗できない。(民法96条3項) ・強迫による意思表示の取り消しは、善意の第三者に対抗できる。 ▼行為能力の制限・詐欺・強迫を理由とする取り消しの場合は、「追認をすることができるときから5年、または行為の時より20年」を経過すると取消権は消滅します。(除斥期間) |
3.「当事者の一方が第三者に対して一定の給付をする旨の契約が締結された場合
において、その第三者の権利は、債務者に対してその第三者が契約の利益を享受
する意思を表示したときに発生する。」
【正解:○】 ◆第三者に給付をする旨の契約 第三者のためにする契約とは、当事者の一方が当事者以外の第三者に直接に債務を負担することを相手方に約する契約を言います。
第三者の権利は、第三者が債務者に対して契約の利益を享受する意思を表示したとき(黙示でもよい)に成立します。(民法537条2項) その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求することができます。 ▼間違いやすいのですが、第三者の受益の意思表示は第三者の権利発生要件であって、契約の効力発生要件ではありません。 ▼第三者は契約締結当時に必ずしも現存していなくてもかまいませんが、受益の意思表示をするときには現存していなければなりません。(判例)例えば、胎児や設立前の法人などがこれにあたります。 |
●参考問題 |
1.「第三者のためにする契約においては、第三者の権利は同人の受益の意思表示によって生じ、受益の意思のない第三者は、当該契約を解除しまた取り消すことができる。」 |
【正解:×】
第三者のためにする契約を解除することができるのは要約者と諾約者で、諾約者が債務を履行しない場合でも、受益者である第三者には解除権はありません。 ただし、受益の意思表示により第三者の権利が発生した後は、当事者がこれを変更したり、消滅させることはできません。(民法538条) |
4.「申込みに対して承諾の通知を発しなくても契約が成立することがある。」
【正解:○】 申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合では、契約は承諾の意思表示と認めるべき事実があったときに成立します。(民法526条2項) 例) 宿泊客が手紙で予約して、ホテル側が承諾の返事を出さないで部屋を用意する |