Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

隔地者間の契約の成立に関する問題 5 力試しの問題


【正解】

× ×

AB間の契約締結交渉において、AがBに対して書面を郵送して申込みの意思表示をした。その際、Aは、承諾の通知を受ける期間の末日を2月5日と定めた。この場合における契約の成否に関する次の記述は、民法の規定によれば○か×か。
                              (司法書士・平成8年・問5・ア〜エ)

1.「Aは、Bが承諾の通知を発する前であれば、申込みを取り消すことができる。」

【正解:×(出題 : 昭和44,50)

◆承諾期間内の「申込の取り消し」はできない

 承諾期間を定めた申込は、その申込が相手方に到達すると承諾期間内は申込を取り消すことはできません(民法521条1項)

 申込を取り消そうと思っていても、承諾期間内に承諾が到達すれば契約は成立します。

申込みの取り消しができない期間
(申込みが相手方に到達する前は、その申込みを取り消すことはできます)
承諾期間の定めのある申込み 承諾の期間内は取り消すことはできない。(民法521条1項)
承諾期間の定めのない申込み 承諾の通知を受けるのに要する相当な期間は取り消すことができない。(民法524条)

2.「Bが承諾の通知を2月4日に発し、これが2月6日に到達した場合、Aがこの承諾を

新たな申込みとみなして、これに対する承諾をすれば、契約は成立する。」

【正解:(出題 : 昭和46,58)

◆承諾期間を経過して到達した承諾

 申込者が承諾期間を定めて申込をした場合は、たとえ承諾期間内に発信したものであろうと、その期間内に承諾が到達しなければ、原則として、その申込は効力を失います。(民法521条2項)

 本設問では、承諾期間を経過した後の2月6日に承諾が到達しており、申込みの効力は消滅しているので契約は成立していませんが、申込者はこの遅れて来た承諾を新たな申込があったものとみなすことができ(民法523条)、これについてさらに承諾を行えば契約は成立します。

●承諾期間の定めのある申込みの効力

 申込           承諾期間が経過        

 ――――――――――――――――――――

  申込の撤回不可    込の効力は消滅(承諾適格なし)

                 承諾不可     

                 →遅れて届いた承諾は新たな申込とみなすことができる

3.「Bが承諾の通知を2月1日に郵送して発し、これが2月3日に到達した場合、契約は

2月3日に成立する。」

【正解:×(出題 : 昭和46,50,57)

◆契約成立での発信主義

 本設問の場合、承諾期間内に承諾が到達しているので契約は成立しています。契約の成立時期ですが、民法では、隔地者間の契約は、申込みに対して承諾の通知を発したときに成立するとしています。(民法526条)

 このため、2月3日に承諾の通知が到達したのであっても、2月1日に郵送して発信していますから、2月1日が契約の成立日になります。

民法では、意思表示の効力の発生時期は到達主義が原則ですが、契約の成立では、例外的に発信主義にしました。

4.「Bが申込みに変更を加えて承諾する旨を通知した場合、Aがこれに対する承諾を

すれば、変更後の内容の契約が成立する。」

【正解:(出題 : 昭和50,57)

 契約交渉の上では、申込に対して修正や変更を加えることが起こります。

 民法では、取引を円滑化するため、承諾者が申込に条件を付けるなど申込みに変更を加えてこれを承諾したときは、その申込を拒絶した上で新たな申込をしたものとみなされます。(民法528条)

承諾の内容は、申込の内容と一致していなければ効力を持たないのでこのような規定になっています。


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