Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

各契約の成立に関する問題


【正解】

×

契約の分類

 民法で規定されている契約は、いろいろな視点から分類することができます。以下の分類用語が宅建の試験に出題されることは最近ではないのですが、各契約の性質を理解する上では、一度は目を通しておく必要があります。

■民法の規定にある契約とない契約

 民法に規定されている契約は、典型契約 (有名契約) と言われています。
 〔有名契約・・・民法で名称が与えられている契約という意味〕

 このほかにも、私的自治の原則や契約自由の原則から、公序良俗などに反しない限り、当事者同士で自由に契約を締結することができます。このように民法に規定のない契約を、非典型契約 (無名契約) と言います。

■契約の成立要件による分類−諾成契約と要物契約

 諾成契約・・・当事者の意思の合致により成立する契約

 要物契約・・・物の引渡しなどをしなければ成立しない契約
        (消費貸借、使用貸借、寄託の三つのみ)

■対価性による分類−片務契約と双務契約

  契約の成立の時点で当事者に残っている債務で分類します。

 双務契約・・・契約の当事者双方が債務を負い、
         その両債務が互いに対価関係に立つもの

         (双務契約は常に有償契約になります。)

         → 同時履行の抗弁権、危険負担の適用があります。

 片務契約・・・契約の当事者の一方だけが債務を負担する

        当事者双方が債務を負担してもその債務同士に対価関係がない。

■経済的な反対給付の有無による分類−有償契約と無償契約

 有償契約・・・契約の当事者が互いに対価的な意義をもつ財産上の負担をする契約。

 無償契約・・・一方の当事者のみが財産上の負担をするか、
         当事者双方の負担が対価的意義を持たない契約。

■要式契約と不要式契約

 民法が定める典型契約は、全て不要式の契約です。

契約の成立に関する次の記述は、民法の規定によれば○か×か。(昭和53年)

1.「売買契約は、売主が財産権を移転させ、買主がこれに対して代金を支払うことを

約束する旨の書面を作成することにより成立する。」

【正解:×

◆売買契約 → 諾成契約

 売買契約は、諾成契約です。

 当事者の合意があれば、契約書を作成し取り交わさなくても売買契約は、有効に成立します。(民法555条)

 売買契約は、有償・双務・諾成契約です。

2.「使用貸借契約は、借主が無償で物を借りて使用収益した後、これを貸主に返還

することを合意したうえで、借主がその物を受け取ることによって成立する。」

【正解:

◆使用貸借契約 → 要物契約

 使用貸借契約は、契約の効力要件として物の引渡しを要する要物契約なので、当事者の合意があるだけでは足りず、契約が成立するためには貸借の目的物を借主に引き渡すことが必要です。(民法593条)

 もっとわかりやすく言えば、使用貸借の合意があった後に、貸主になるはずの当事者が「気が変わったのでやっぱりヤメた」と言って断っても、引渡しをしていない以上(合意があっただけでは)使用貸借契約は成立していないことになります。

 使用貸借契約は、無償・片務・要物契約です。

3.「賃貸借契約は、貸主が借主に対して、ある物を使用収益させることを約し、借主が

これに対して賃料を支払うことを約すという合意が成立することによって成立する。」

【正解:

◆賃貸借契約→諾成契約

 賃貸借契約は、諾成契約で、当事者が賃貸借について合意すれば、契約書の作成や目的物の引渡しなどを必要としません。合意だけで契約は有効に成立します。(民法601条)

 賃貸借契約は、有償・双務・諾成契約です。

4.「委任契約は、委任者が受任者に対し法律行為をなすことを委託し、受任者が

これを承諾することによって成立する。」

【正解:

◆委任契約 → 諾成契約

 委任者と受任者との間で委任について合意すれば、それだけで契約が成立します。(民法643条)

 委任は、無償・片務・諾成契約ですが、有償にする特約があれば、有償・双務・諾成契約になります。


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