Brush Up! 権利の変動篇
共有の過去問アーカイブス 平成9年・問2
A及びBは,共有名義で宅地を購入し,共有持分の割合を,Aが 1/3,Bが2/3と定めたが,持分割合以外には特約をしなかった。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか(平成9年・問2) |
1.「Bは,Aの同意を得なければ,自己の持分を他に譲渡することはできない。」 |
2.「Bが自己の持分を放棄したときは,Aが単独所有者となる。」 |
3.「Bは,その宅地の全部について,2/3の割合で使用する権利を有する。」 |
4.「Bだけでなく,Aもその宅地の分割請求ができる。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | ○ | ○ | ○ |
1.「Bは,Aの同意を得なければ,自己の持分を他に譲渡することはできない。」
【正解:×】(類・昭和63) ◆持分の処分,放棄では他の共有者の同意は要らない 各共有者は,他の共有者の同意を得なくても,自分の持分権を自由に処分する(譲渡・抵当権などの担保設定・放棄)ことができます。したがって、×になります。 |
2.「Bが自己の持分を放棄したときは,Aが単独所有者となる。」
【正解:○】 ◆共有者の一人が持分放棄→その持分は他の共有者に帰属 共有者の1人が,その持分を放棄したとき又は相続人なくして死亡したときは,その持分は他の共有者に帰属します。(255条)
本肢では,共有者はAとBの2人だけなので,Bが自己の持分を放棄したときは,Bの持分はAに帰属し、Aは単独所有者となります。 |
●持分の放棄と登記−共有と物権変動 |
Bが自己の持分を放棄したことによっては,Bの持分はAに帰属しますが、このときAは持分取得の移転登記をしておかないと、第三者に対してBの持分を取得したことを対抗できません。
A |
3.「Bは,その宅地の全部について,2/3の割合で使用する権利を有する。」
【正解:○】 ◆共有物の使用は持分に応じたもの 各共有者は,共有物の全部につき,その持分に応じた使用をすることができます。(249条)具体的な使用方法は、共有者で協議しますが、この使用方法の協議は管理行為になり、各共有者の持分の価格に従いその過半数で決します。(252条) したがって、Bは,共有持分の割合が2/3なので、その宅地の全部について,2/3の割合で使用する権利を有します。 |
4.「Bだけでなく,Aもその宅地の分割請求ができる。」
【正解:○】 ◆共有物分割請求の自由 各共有者は,いつでも分割請求することができ(256条1項)また5年を超えない期間で分割しないとする特約をすることもできます。(256条1項但書) |