Brush Up! 権利の変動篇
物権変動の過去問アーカイブス 平成7年・問2
Aの所有する土地をBが取得した後,Bが移転登記をする前に,CがAから登記を移転した場合に関する次の記述のうち,民法及び不動産登記法の規定並びに判例によれば,BがCに対して登記がなければ土地の所有権を主張できないものはどれか。(平成7年・問2) |
1.「BがAから購入した後,AがCに仮装譲渡し,登記をC名義に移転した場合。」 |
2.「BがAから購入した後,CがBを強迫して登記の申請を妨げ,CがAから購入して登記をC名義に移転した場合。」 |
3.「BがAから購入し,登記手続きをCに委任したところ,Cが登記をC名義に移転した場合。」 |
4.「Bの取得時効が完成した後,AがCに売却し,登記をC名義に移転した場合。」 |
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
主張できる | 主張できる | 主張できる | 主張できない |
1.「BがAから購入した後,AがCに仮装譲渡し,登記をC名義に移転した場合。」 |
【正解:主張できる】 ◆通謀虚偽表示の譲受人−登記なしに対抗できる B(買主) 未登記 AのCに対する仮装譲渡は通謀虚偽表示であり、無効です。このため、Cは無権利者となるので、Bは登記なしにCに対抗できます。
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2.「BがAから購入した後,CがBを強迫して登記の申請を妨げ,CがAから購入して登記をC名義に移転した場合。」 |
【正解:主張できる】 ◆詐欺・強迫によって登記を妨げた者−登記なしに対抗できる B(買主) 未登記
したがって、Bは登記がなくても、Cに対抗できます |
●不動産登記法 |
(登記がないことを主張することができない第三者) 第5条 詐欺又は強迫によって登記の申請を妨げた第三者は、その登記がないことを主張することができない。 2 他人のために登記を申請する義務を負う第三者は、その登記がないことを主張することができない。ただし、その登記の登記原因(登記の原因となる事実又は法律行為をいう。以下同じ。)が自己の登記の登記原因の後に生じたときは、この限りでない。 |
3.「BがAから購入し,登記手続きをCに委任したところ,Cが登記をC名義に移転した場合。」 |
【正解:主張できる】 ◆他人のため登記申請する義務のある者−登記なくして対抗できる B(買主) 未登記
したがって、Bは登記がなくても、Cに対抗できます。 |
4.「Bの取得時効が完成した後,AがCに売却し,登記をC名義に移転した場合。」 |
【正解:主張できない】 ◆取得時効完成後の第三者−登記なしに対抗できない
Bの時効完成 Cが購入・登記
――●―――――●――――→ B(取得時効完成) 未登記 Bの取得時効完成後に、第三者CがAから甲土地を買い受けた場合は、Aによって二重譲渡があったのと同じように考えて、登記の先後によって優劣を決します。 Bは登記(時効による原始取得)がないと、時効による取得をCに対抗することができません。先にCが移転登記してしまうともはやBは時効取得を主張できなくなります。(大審院・大正14.7.8) |
●対比問題 |
CがBの取得時効完成前にAから甲土地を買い受けた場合には,Cの登記がBの取得時効完成の前であると後であるとを問わず,Bは,登記がなくても,時効による甲土地の所有権の取得をCに対抗することができる。(平成10年・問2・肢3) |
【正解:○】
◆取得時効完成前の第三者−登記なしに対抗できる AがCに譲渡 Bの時効完成 ――●―――――●――――→ Bの取得時効完成前に第三者CがAから甲土地を買い受けた場合は、BとCは時効での当事者の関係にあり、Bは登記がなくても、時効による甲土地の所有権の取得をCに対抗することができます。(最高裁・昭和41.11.22) この場合は、Bの取得時効完成の後にCが移転登記したとしても、Bは、時効による取得をCに主張することができます。(最高裁・昭和42.7.21) → Cの購入がBの時効完成の前というだけで、甲土地の所有権が誰のものになるかが決まるため、Cの移転登記が、Bの取得時効完成の前か後かには、関係ない。 |