Brush Up! 権利の変動篇

物権変動の過去問アーカイブス 昭和41年・登記がないと対抗できない第三者


民法177条は不動産物権の変動は登記なくして第三者に対抗しえない旨を定めているが,判例はその第三者を「登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者」と解している。次の記述のうち,その第三者に含まれるものはどれか。(昭和41年)

1.「被相続人が不動産をに譲渡し,まだ登記しない間に相続が開始し,相続人が同一不動産をさらにに譲渡した場合の

2.「不動産の譲受人の法定代理人が,のために登記することを怠って,自分のために先に登記した場合の

3.「所有の不動産について,が文書を偽造して移転登記をなし,これを更に に譲渡して移転登記をした場合の

4.「相続欠格者 から相続財産たる不動産の譲渡を受けて登記した者

【正解】

× × ×

●考え方
 『各肢で指定された者は,対抗関係に立つ者に対して,登記がないことを主張できる正当な利益を有する者か?』

 という視点で考えるとわかります。

1.「被相続人が不動産をに譲渡し,まだ登記しない間に相続が開始し,相続人が同一不動産をさらにに譲渡した場合の

【正解:

二重譲渡−登記があれば対抗力

            (譲受人) 未登記
          /          
 (被相続人)   
          \
            (相続人) ―(からの譲受人) 移転登記

 を起点として,に二重譲渡された形になります。

 二重譲渡では,背信的悪意者などを除いて善意・悪意は関係なく,登記の先後によってその所有権を決しました。(判例177条)

 したがって,登記を得ているは,対抗関係に立つに対して『登記がないのでには対抗力がない』と主張できます。

2.「不動産の譲受人の法定代理人が,のために登記することを怠って,自分のために先に登記した場合の

【正解:×

◆他人のため登記申請する義務のある者は登記の欠缺を主張できない

           (譲受人) 未登記
         /          
    譲渡人    のために登記手続する義務がある。
         \
           (の法定代理人) 移転登記

 譲渡人を基点とした二重譲渡のように見えますが,不動産登記法5条より,は登記があっても,に対して,「登記がない」と主張する正当な利益を有する者ではありません。

 他人(本肢ではのため登記を申請する義務のある者(登記申請者に代わって登記を申請する者)が自己の名義に移転登記したときは、に登記がないこと(登記の欠缺)を主張できない。(不動産登記法・5条)

他人のため登記を申請する義務のある者

 権利者の親権者・後見人などの法定代理人、司法書士などの任意代理人、法人の代表権者、(不在者の)財産管理人など。

3.「所有の不動産について,が文書を偽造して移転登記をなし,これを更に に譲渡して移転登記をした場合の

【正解:×

◆無権利者からの譲受人−無権利者

 (真の権利者)―――――――――(無権利者)(から譲り受けた。無権利者)
          文書を偽造して登記             移転登記

 は無権利者から譲り受けているので,は所有権を取得することはできません。

 したがって,は登記があっても,に対して,「登記がない」と主張する正当な利益を有する者ではありません。

4.「相続欠格者 から相続財産たる不動産の譲渡を受けて登記した者

【正解:×

◆無権利者からの譲受人−無権利者

            真の相続人 未登記
          /          
   被相続人
          \
             (相続欠格者) ― (譲受人) 移転登記

 被相続人を基点とした二重譲渡のように見えますが,本肢は×です。

 相続欠格者 から土地を譲り受けたは,は所有権を取得することはできません。

 したがって,は登記があっても,真の相続人に対して,「登記がない」と主張する正当な利益を有する者ではありません。


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