Brush Up! 権利の変動篇

不動産登記法の過去問アーカイブス 仮登記 平成2年・問16 改正対応


不動産の仮登記に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。(平成2年・問16)

1.「所有権移転の仮登記は,実体上すでに所有権が移転している場合には,することができない。」

2.「仮登記に基づく本登記は,登記記録中あらかじめ設けられている仮登記の次の余白に記載される。」

3.「賃借権設定の仮登記は,権利部の甲区に記録される。」

4.「所有権に関する仮登記をした後,本登記を申請する場合においては,その仮登記後第三者に所有権移転の登記がされているときでも,申請情報と併せて,その者の承諾を証する情報又はこれに対抗できる裁判があったことを証する情報を提供することを要しない。」

【正解】

× × ×

1.「所有権移転の仮登記は,実体上すでに所有権が移転している場合には,することができない。」

【正解:×

条件不備の仮登記(1号仮登記)

 所有権移転の1号仮登記は,実体上すでに所有権が移転している場合で本登記に必要な添付書類などの手続上の要件が揃わなかったときにする仮登記です(不動産登記法・105条1号)

 所有権移転の2号仮登記は,物権変動(所有権の移転等)はまだ生じていないが,所有権移転請求権や停止条件付請求権などは発生しているのでこの請求権を保全するときにする仮登記です(不動産登記法・105条2号)

 したがって,1号仮登記では,実体上すでに所有権が移転している場合にすることができるのですから,「実体上すでに所有権が移転している場合には,することができない」という本肢は×です。

 1号仮登記   物権変動(所有権の移転等)は生じているが,
 本登記に必要な添付情報など
 手続上の要件が揃わなかったとき
 2号仮登記   物権変動(所有権の移転等)はまだ生じていないが,
 所有権移転請求権や停止条件付請求権などは発生している
 のでこの請求権を保全するとき
●不動産登記法−仮登記
(仮登記)
第105条
 仮登記は、次に掲げる場合にすることができる。

一  第3条各号に掲げる権利について保存等があった場合において、当該保存等に係る登記の申請をするために登記所に対し提供しなければならない情報であって、第25条第9号の申請情報と併せて提供しなければならないものとされているもののうち法務省令で定めるものを提供することができないとき。

 法務省令で定めるもの(登記規則178条)=登記識別情報・第三者の許可,同意又は承諾を証する情報

二  第3条各号に掲げる権利の設定、移転、変更又は消滅に関して請求権(始期付き又は停止条件付きのものその他将来確定することが見込まれるものを含む。)を保全しようとするとき。

(登記することができる権利等)
第3条
 登記は、不動産の表示又は不動産についての次に掲げる権利の保存等
(保存、設定、移転、変更、処分の制限又は消滅をいう。次条第2項及び第105条第1号において同じ。)についてする。

一  所有権
二  地上権
三  永小作権
四  地役権
五  先取特権
六  質権
七  抵当権
八  賃借権
九  採石権(採石法 (昭和25年法律第291号)に規定する採石権をいう。第50条及び第82条において同じ。)

2.「仮登記に基づく本登記は,登記記録中あらかじめ設けられている仮登記の次の余白に記載される。」

【正解:

◆仮登記の次の余白は将来の本登記のため

 仮登記は,権利部の相当区〔所有権の仮登記ならば甲区,所有権以外の権利の仮登記ならば乙区〕になされ,仮登記がなされたときは,その次に本登記ができる余白を設けなければなりません(登記規則・179条1項)。その余白は,当該仮登記に基づいて仮登記の順位番号と同一の番号で将来本登記をするためのものです。

 仮登記に基づく本登記の順位は仮登記の順位とされているので,そのためにこのような措置がとられています。

●登記規則
(仮登記及び本登記の方法)
第179条  登記官は、権利部の相当区に仮登記をしたときは、その次に当該仮登記の順位番号と同一の順位番号により本登記をすることができる余白を設けなければならない。

2  登記官は、仮登記に基づいて本登記をするときは、当該仮登記の順位番号と同一の順位番号を用いてしなければならない。

3  前二項の規定は、保全仮登記について準用する。

●不動産登記法−仮登記に基づく本登記
(仮登記に基づく本登記の順位)
第106条
 仮登記に基づいて本登記(仮登記がされた後、これと同一の不動産についてされる同一の権利についての権利に関する登記であって、当該不動産に係る登記記録に当該仮登記に基づく登記であることが記録されているものをいう。以下同じ。)をした場合は、当該本登記の順位は、当該仮登記の順位による。

(仮登記に基づく本登記)
第109条
 所有権に関する仮登記に基づく本登記は、登記上の利害関係を有する第三者(本登記につき利害関係を有する抵当証券の所持人又は裏書人を含む。以下この条において同じ。)がある場合には、当該第三者の承諾があるときに限り、申請することができる。

2  登記官は、前項の規定による申請に基づいて登記をするときは、職権で、同項の第三者の権利に関する登記を抹消しなければならない。

3.「賃借権設定の仮登記は,権利部の甲区に記録される。」

【正解:×

◆権利部の相当区の区別

 賃借権設定の仮登記は,所有権以外の権利に関するものなので,相当区事項欄は乙区です。

4.「所有権に関する仮登記をした後,本登記を申請する場合においては,その仮登記後第三者に所有権移転の登記がされているときでも,申請情報と併せて,その者の承諾を証する情報又はこれに対抗できる裁判があったことを証する情報を提供することを要しない。」

【正解:×

◆所有権の仮登記に基づく本登記

 所有権に関する仮登記に基づく本登記の申請には,利害関係者の承諾を証する利害関係者自身が作成した情報利害関係者に対抗できる裁判があったことを証する情報を提供しなければいけません。(不動産登記法109条1項,登記令別表69)

 ●対比● 所有権以外の権利に関する仮登記をした後でその本登記を申請する場合には,原則として,不要とされています。

 所有権に関する仮登記に
 基づく本登記 
 利害関係者の承諾を証する

 利害関係者自身が作成した情報か,

 利害関係者に対抗できる裁判があったことを証する情報

 所有権以外の仮登記に
 基づく本登記 
 利害関係者の承諾の情報

 これに対抗できる裁判があったことを証する情報は不要


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