Brush Up! 権利の変動篇

正解・解説

土地の賃貸借に関する問題 「借地上の建物」の譲渡・賃貸  平成7年・問7


【正解】

× × ×

の所有地を賃借して,建物を建てその登記をしている場合に関する次の記述は,民法の規定及び判例によれば,○か,×か。(平成7年・問7)

1.「がその土地をに譲渡する場合,賃貸人の義務の移転を伴うから,は,その

譲渡についての承諾を必要とする。」

【正解:×
          土地を譲渡
 (賃貸人) ―――――――――― (第三者)
 |       
 (賃借人) 

土地の所有者(賃貸人)  B → C
土地の賃借人  A

 賃貸人が賃借の目的物である自己所有の土地を譲渡することは、賃貸人の義務の移転を伴いますが、賃貸人とその土地の譲受人の間の契約で足り、賃借人の承諾は必要とされていません。(最高裁・昭和46.4.23)

2.「がその建物をに譲渡する場合,特別の事情のない限り,は,に対する

敷地の賃借権譲渡についての承諾を得る必要がある。」

【正解:

 (賃貸人)
 |       借地上の建物を譲渡
 (賃借人) ―――――――――― (第三者)

土地の所有者(賃貸人)  B 
土地の賃借人  A (→ D)
建物の所有者  A → D

 借地上の建物を譲渡することは、借地権の譲渡・転貸とみなされ、借地権が賃借権であれば、土地の賃貸人からその賃貸借契約を解除される恐れがあります。(民法612条)

 したがって、特約などの特別な事情がない限り、賃借人は、に対する敷地の賃借権譲渡について賃貸人Bの承諾を得る必要があります。

<参考>

 民法の特別法である“借地借家法の規定”によれば、第三者(本問の場合では)が借地上の建物を取得したとき、借地権設定者(地主)が賃借権の譲渡や転貸を承諾しないときは、その第三者は、借地権設定者にその建物を時価で買い取るべきことを請求できる(借地借家法第14条)と第三者の保護がされています。

 また、借地権者(本問では)が借地上の建物を第三者()に譲渡しようとするとき、その第三者が賃借権を取得しても借地権設定者(地主)に不利になるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡を承諾しないとき、裁判所は、借地権者()の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることもできる(借地借家法第19条)と、借地権者から建物を取得した第三者も保護がされています。

3.「からその土地の譲渡を受けた場合,は,登記を移転していなくても

賃貸人たる地位の取得をに対抗することができる。」

【正解:×
          土地を譲渡
 (賃貸人) ―――――――――― (第三者)
 |       
 (賃借人) 

土地の所有者(賃貸人)  B → E
土地の賃借人  A

 賃借の目的物である土地の譲渡に伴い、賃貸人たる地位が移転した場合、新たに賃貸人の地位を取得したは、所有権移転登記を経ていなければ、に対抗することはできません。(最高裁・昭和49.3.19)

4.「からその建物を賃借する場合,特別の事情がない限り,は,その賃借に

ついての承諾を得なければならない。」

【正解:×

 (賃貸人)
 |       借地上の建物を賃貸
 (賃借人) ――――――――――― (第三者)

土地の所有者(賃貸人)  B 
土地の賃借人・建物の賃貸人  A 
建物の賃借人  F

 上で見たように、借地上の建物が譲渡された場合には、借地権の譲渡・転貸とみなされ、借地権が賃借権であれば、土地の賃貸人からその賃貸借契約を解除される恐れがあります。(民法612条)

 しかし、本設問のように、借地上の建物を賃貸する場合には、借地権の譲渡や転貸ということにはなりません。なぜならば、借地上の建物の賃借人は、賃借している建物と別個に敷地を利用しているわけではなく、第三者に独立の土地使用収益権が与えられたわけではないからです。(大審院・昭和8.12.11)

●類題
1.「は、から所有の土地を借地して木造住宅を建て、当該住宅をに賃貸している。に無断でに貸していた場合は、無断転貸借であるので、から借地契約を解除される恐れがある。」(昭和53年)
【正解:×

 (賃貸人)
 |       借地上の住宅を賃貸
 (賃借人) ――――――――――― (第三者)

土地の所有者(賃貸人)  B 
土地の賃借人・建物の賃貸人  A 
建物の賃借人  C

 が借地上の自ら所有している建物をに賃貸する場合には、借地権の譲渡や転貸にはなりません。

●借地権と借家権の対抗要件のパズル
1.「は、から所有の土地を借地して木造住宅を建て、当該住宅をに賃貸している。に当該土地を譲渡した場合、の建物が未登記であれば、に対して借地権を主張できないが、は引渡しを受け現に居住しているのであるから、に対して借家権を主張できる。」(昭和53年)
【正解:×】 

            土地を譲渡
 (賃貸人) ――――――――――― (第三者)
 |       借地上の建物を賃貸
 (賃借人) ――――――――――― (第三者)

土地の所有者(賃貸人)  B  → D
土地の賃借人・建物の賃貸人  A 
建物の賃借人  C

 借地権の第三者への対抗要件は、借地権の登記であり(民法177条、605条)、借地権の登記〔土地の賃借権または地上権の登記〕がなくても、借地上の建物を登記すれば、土地を譲り受けた第三者に対抗できますは、借地権の登記も、借地上の建物の登記もないときは、対抗することはできません。(借地借家法10条1項)

 所有の建物を賃借しているは、建物の賃借権の登記をしていなくても、建物の引渡しを受けているので、から建物の譲り渡しを受けた第三者には対抗できます(借地借家法31条1項)、本設問のように、建物の敷地である土地の第三者に対しては、対抗できません。は、AC間の借家契約とは関係がない者だからです。

 したがって、前半は○ですが、後半は×になります。

対抗要件では、何に対する第三者なのかシッカリ把握することが大切です。このへんがグラついていると、本来はクイズのはずなのに、解けないパズルになってしまいます。


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