Brush Up! 権利の変動篇
債権譲渡
過去問重要論点完全マスター
●なぜ、債権譲渡が必要なのか | ||
債権譲渡に登場する当事者の立場で、それぞれの思惑を見ていきましょう。 1) 資金調達・投資としての債権譲渡 -債権の売買- 900万円で債権譲渡
2) 代物弁済・債権回収としての債権譲渡 D(Aの債権者、譲受人、Aへの債権を回収する)
※債権の譲渡担保・・・AがDから融資を受ける際に、AがBに対して持っている債権を、担保目的でDに譲渡し、Aの債務不履行があれば、Dはその譲り受けた債権を行使して、Bから貸付金を回収する。債権譲渡には、このようなケースもあります。 |
●債権譲渡とは何か |
債権譲渡 ・債権は、原則として、譲渡できる。 ・債権譲渡により、債務者Bは、譲受人Cに弁済することになる。 ・譲受人が、債務者に、「支払え」というには、 AからBへ債権譲渡の通知 (Aの代理人として、CがBに通知してもよい) BがA or Cに、承諾する。 このどちらかが必要。 ・通知の時期は、債権譲渡と同時でなくてもよく、債権譲渡の後に通知されると、通知が到達したときから対抗力を生じる。遡及効はありません。(大審院・大正3.5.21) → ただし、債権譲渡の前に通知されたものは、債務者が二重弁済する恐れがあるため、無効と考えられています。 ・通知の内容は、債権の同一性を債務者が特定の者に債権譲渡されたことを認識できる程度でよく、必ずしも細部にわたって正確でなくてもよい。 ・債務者への対抗要件としては、債務者に対する通知、債務者の承諾には方式が定められているわけではありません。〔⇔第三者への対抗要件には確定日付ある証書が必要。〕 |
●譲受人の債務者への対抗要件 | |
債務者への通知 | 譲渡人(元の債権者) → 債務者 |
債務者の承諾 | 債務者 → 譲渡人(元の債権者)
or 債務者 → 譲受人 |
●債権譲渡とは何か−保証人から見ると |
債権譲渡 債権譲渡とは、債権の同一性を保ったまま、契約によって債権を移転することです。(民法466条1項) このため、抵当権などの担保権、保証債権、抗弁権、利息債権などの従たる権利も原則として譲受人に移転します。 この結果、Aの債権の保証債務を負っているDは、譲受人Cに対して、保証債務を負うことになります。(保証債務の随伴性) |
●債権者が債権譲渡の事実を否定したら、どうすればいいか |
◆債権者が債権譲渡の事実を否定 → 供託 債権譲渡 BがA名義の債権譲渡通知を受領し、かつCがA名義の債権を譲り受けたと主張し、Aがその事実を否定するとき、債務者Bは、その受領した債権譲渡通知書はニセものかも知れないと疑うことになりますが、AまたはCに弁済しなければ、Bは債務不履行の責任を問われることにもなり、その場合のBは、法務局に所属する供託所に供託(弁済供託)する方法があります(第494条)。 |
●債権譲渡禁止の例外(1) 譲受人が善意かつ無重過失なら対抗できない |
◆譲渡禁止特約は、善意かつ無重過失の譲受人に対抗できない 債権譲渡 債権譲渡禁止の特約に違反して、債権者が債権を譲渡した場合は、原則としてその債権譲渡は無効になります。ただし、譲渡禁止の特約について、譲受人が善意であり、かつ、重過失でなければ、譲受人は有効に債権を取得します。(民法466条2項、最高裁・昭和48.7.19) ◆譲渡禁止特約は、悪意の第三者には対抗できる 債権譲渡禁止の特約は、第三者が悪意であれば、対抗することができ、債権譲渡は効力を生じない。 債権譲渡 |
●債権譲渡禁止の特約の例外(2) 禁止されていても差押えできる |
← E(差押債権者) 差押えを制限する規定はなく、譲渡禁止の特約がある債権でも、Aの債権者Eは、自らの債権をBから回収するため、差押えをすることができます。 |
●差押について |
← E(差押債権者) 差押は、差押債権者Eが裁判所に債権執行の差押命令の申立をして、裁判所は適法かどうか審査し、差押命令をA、Bに送達します。(民事執行法) 差押命令が発せられると、差押の効力として、その債権の処分は禁止され、債権者Aは債務者Bからの弁済を受領する権限はなくなります。(債権の譲渡や免除もできなくなります。) もし、差し押さえられた債権に抵当権などの担保がついていれば、担保権も差し押さえられます。 また、債務者Bも債権者Aへの弁済を禁じられます。 ▼差押の効力は、差押命令がBに送達された時に生じます。(民事執行法) |
●債権譲渡の通知 |
◆債権譲渡の通知では、譲渡人に対して生じた事由を譲受人に主張できる 債権譲渡 債権の譲渡人(A)が債権譲渡の通知を出しただけで、まだ債務者(B)の手もとに届かない間に、債務者Bが譲渡人Aに対し、異議を申し立てる事情が生じた場合には、これらを債権の譲受人(C)に対して主張できます(第468条2項)。 1) すでに弁済していた 債務者は、その通知を受けるまでに譲渡人に弁済したときは、その弁済によって債務が消滅していることを譲受人に主張でき、譲受人に対抗することができます。 2) 債権者との相殺適状 債務者(B)は、その通知のときにおいて既に相殺適状にある債権を譲渡人Aに対して有していれば、Bは譲受人Cに対して相殺をもって対抗することができます。(最高裁・昭和32.7.1) ▼債務者が通知後に譲渡人に対する反対債権を取得しても、それをもって債務者が相殺することはできない(大審院・昭和9.9.10) |
●異議をとどめない承諾 | |||||||
◆うっかり異議をとどめない承諾をするとどうなるか 債権譲渡
▼善意の譲受人に主張できなくなるもの 弁済、相殺、同時履行の抗弁権や留置権、その債権の元になる契約の無効・詐欺による取消しの主張など 例えば、債務者が異議を留めない承諾をした場合は、その債務が弁済されていても、その弁済を債務者は譲受人に主張できません。 結果的にAとCには二重払いにはなりますが、Aに弁済したお金は取り戻すことができます。これは、Aに弁済したことを、善意のCに対しては主張できませんが、Aに対しては主張できるためです。 ▼債権の譲受人Cが、もし「BがAに弁済していた」ことを知っていたのならば(悪意のとき)、Bは、異議を留めない承諾をしていたとしても、悪意の譲受人に対しては、弁済したことを主張できます。(最高裁・昭和42.10.27) 債権譲渡
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●債権譲渡の通知と承諾の効力の整理 | |
通知
(異議をとどめる承諾) |
債務者は、『その通知を受けるまでに譲渡人に 対して生じた事由』を、譲受人に主張できる。 ※異議を留める承諾では、承諾前に生じた事由 |
異議をとどめない承諾 | 債務者は、『承諾前に譲渡人に対して生じた事由』 を、善意の譲受人に主張できない。 |
●債権の二重譲渡 | |||
◆債権の二重譲渡の優劣判定基準 ―――――――→D(譲受人)
※通知書や承諾書の確定日付の先後ではないことに注意。 ※確定日付のある証書・・・公正証書(公証人役場で作成)・内容証明郵便など。
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●債権譲渡の対抗要件の整理 | |
債務者への対抗要件 | 譲渡人(元の債権者)から債務者への通知
債務者から 譲渡人 or 譲受人 への承諾 |
債務者以外の第三者への対抗要件 | 譲渡人(元の債権者)から債務者への通知
債務者から 譲渡人 or 譲受人 への承諾 ※通知、承諾とも確定日付のあるもので ※確定日付のあるものの優劣は、 ※確定日付は、債権の譲受を第三者に |
●債権譲渡の通知と差押命令の優劣 | |
◆債権譲渡の通知と差押命令の優劣 ← E(差押債権者)
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●同時に到達したとき | |
◆『差押命令』と『債権譲渡の通知』が同時に到達 ← E(差押債権者)
C、Eとも、債権全額の弁済を請求できるので、Bは、Eへの支払、供託等によりこの債権が消滅していない以上、譲受人Cからの請求を拒むことはできません。 もちろん、差押債権者Eからの請求に対してもBは拒めないことになります。 では、債務者は両方に債務全額を支払わなければいけないかというとそうではありません。C、Eのどちらかに債務全額を弁済すれば、Bの債務は消滅します。 |