Brush Up! 権利の変動篇
正解・解説
相殺に関する問題2 昭和62年・問10
【正解】
1 | 2 | 3 | 4 |
× | × | ○ | × |
AはBに対して土地を1,000万円で売却し,その代金債権を有している。一方,BはAに対して同じく1,000万円の貸金債権を有している。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。(昭和62年・問10) |
●言外の前提
AB間に相殺禁止の特約があると、相殺の意思表示をすることはできないので、相殺禁止の特約はないものとして問題を解くことになります。 |
1.「土地代金の支払場所が鹿児島,貸金の返済場所が青森となっており,両者の債務
の履行地が異なる場合は,相殺することができない。」(類:昭和58)
【正解:×】 ◆履行地が異なっていても相殺することはできる 相殺は、双方の債務の履行地が異なっていてもすることができます。ただし、相殺をする当事者は、その相手方が履行地で履行を受けないことによって被る損害を賠償しなければなりません。(507条) |
2.「両者の債権が相殺適状になった後,Aの代金債権について消滅時効が完成した。
この場合には,Aのほうから相殺を主張することはできない。」
【正解:×】昭和58年・問8・肢4,62年・問10・肢2,平成7年・問8・肢1,16年・問8・肢3 ◆相殺適状になった後に消滅時効が完成しても相殺できる Aの代金債権について ―――●―――――――●―――――――――――― Aの債権が時効で消滅しても、その消滅以前に両者の債権が相殺適状になっていたときは、Aは時効消滅した債権を自働債権として相殺を主張できます。(508条) |
●参考問題 |
1.「すでに消滅時効の完成した債権を譲り受けた者は,その債権を自働債権として相殺することができる。」 |
【正解:×】
すでに消滅時効にかかった債権を譲り受けこれを自働債権として相殺することは許されない。(最高裁・昭和36.4.14) |
3.「両者の債権が相殺適状になった後,AがBに対して相殺の意思表示をしたときは,
その効力は相殺適状が生じた時に遡って発生する。」(類:昭和62)
【正解:○】 ◆相殺の遡及効 相殺は、当事者の一方からその相手方に相殺の意思表示によってなし、この意思表示は双方の債務に相殺適状が生じた時に遡って効力を生じます。(506条2項) |
4.「両者の債務の履行期限が異なる場合は,双方の債務の弁済期が到来した後に
のみ相殺が可能である。」
【正解:×】 自働債権 受働債権 ―――●―――――――●――――――――――― ↑この時点で相殺できる 相殺を意思表示する側の債権(自働債権)が弁済期に達していれば、相殺される側の債権(受働債権)が弁済期に達していなくても、相殺する側は、期限の利益を放棄して(136条2項)、相殺を主張することができます。(大審院・昭和8.5.30) ▼ 受働債権が『期限の定めのない債務』のときも、相殺する側の債権(自働債権)が弁済期に達していれば、いつでも相殺できます。(大審院・昭和8.9.8) ●受働債権が期限の定めのない債務のとき 自働債権 ―――●――――――――――――――――――― ↑この時点で相殺できる |
●類題 |
1.「受働債権の弁済期が到来しないと,相殺は不可能である。」 |
【正解:×】 |